□万感
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ねぇ、知ってます?


僕らの気持ち。


知らないんでしょうね


知ってても

直してなんて、くれないでしょうけど




 ――   万  感   ――




「たで〜まぁ〜銀さんのお帰りだよぉ」


皆が寝静まった深夜に、
死んだ目をしたマダオは大きな音を立てて帰ってきた。


「…今日はまた、酷い有様ですね」


予想通り玄関先にグッタリ
でかい図体が転がっている。


相当な酒を飲んだのか

今日は一段と酒臭い


「新ちゃ〜ん、…みず、ちょーだい」

「何だ、ちゃんと意識はあるんですね。ただの屍かと思いました」


連日続いているに飲み歩きにイライラしつつも、
ちゃんと水を用意する僕は偉いと思う。


偉い、というか…

この人に甘すぎるんだろう


「はい、どうぞ」

「…ん、あんがとーね」

「はぁー…どこにそんな飲む金があるんだか」


「ちゃ〜んと、奢ってもらってっから…大丈夫なんだな〜」


水を飲み干したコップを床に転がし、
その手で唐突に肩を抱き寄せられる。


「ちょ、な…何すんですかっ」

「んふふ…ちょっとだけ、ちょっとだけよ〜なんつってぇ」


そう言って、

僕の肩にはふわふわと柔らかい頭
月に照らされ銀の髪がキラキラと光っている


「まったく…二人揃って風邪なんて、嫌ですからね!」



ここ最近

飲み明かして帰ってこない天パのために、
いつも早寝早起きな神楽ちゃんが頑張って待ってたなんて知らないだろう。


アンタを布団まで運ぶために
僕が寝ずに待っている事も。


何かあったとしても
爛れた大人は酒で解決しようとして。


楽しい事も

辛い事も

分かち合いたいなんて


僕たちの気持ちも知らずに、

この糖尿間近なマダオめ。



半分寝かけていた神楽ちゃんを寝かす前に


「帰ってきたら…新八ィ、スマキにして閉じ込めとくヨロシ」

「うん、そうだね…ついでに糖分も没収にしようか」


なんて、
二人で決めた決定事項。


安心して体重を預けて寝ている頭を見て
少しだけ満たされた気持ちになるけど。


でも、約束は約束。



「…とりあえず、明日からは外出禁止ですよコノヤロー」



早朝から二人+一匹で

手厚いもてなしをしてやろう。




さて、

明日が楽しみになってきた






end.

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