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□第1章
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『お母さん…!お父さん…!』
夜に少女が家に帰ると式台で倒れている2人がいた。その2人は少女の両親だ。
『どうして…こんな血塗れなの!!一体誰に…!ねぇ!!』
?「グッ…」
倒れている両親に気付かなかったが部屋の奥、畳で何かを頬張っているもう1人…?もう1匹…?獣のような体勢のものがいた。
母「…名前…に、…にげ…」
『お母さん!!!!そんな……』
?「オマエモ…クッテヤル!」
獣のようなものが一直線に名前に向かってきた。…が、獣のようなものは次の瞬間には首が落ちていた。
?「…エ?」
首が落ちた獣のようなものは首から崩れるように消えていった。
『わたし…わたしの家族……』
少女の手には刀が握られていた。
『…帰るの遅くなってごめんなさい…、……わたしひとりぼっちになっちゃった…』
目を伏せて俯く少女。
『最終選別から帰ったよ…』
誰に言うでもなく呟く。少女は鬼殺隊になったばかりだったのだ。
?「…おい、これは…」
呆然と立っていると後ろから声をかけられた。
振り向くと毘沙門亀甲をアレンジした柄と赤錆色の無地で仕立てた片身替わりの羽織りが目に入った。
小柄な男が少し離れたところに立っていた。
?「…そうか…お前の家族か…鬼はどうした…?」
『……』
?「倒したのか」
チラリと少女の刀に目を向ける。少女の刀には血が付いていた。
『…わ、わたしが帰るの遅かったから……もう少し早く帰っていれば…わたしの家族は……』
?「自分を責めるな」
ずっと伏せていた目を上げ男のほうを見た。
『(悲しそうな目…同情してくれてるの…?)』
?「過去は変えられない…これからを生きるしかないんだ」
思わずコクリと頷く。
?「…名前は?」
『……苗字名前』
?「苗字、俺の元に来るといい」
男は少女に近付き、そっと手を頭に乗せた。
?「俺は水柱、冨岡義勇だ」
『水柱様…』
少女の呟いた言葉に冨岡はフッと笑った。
冨「そんなかしこまらなくていい…」
『…えっと…冨岡さん…』
冨岡は自分の名前を呼ばれたことを確認すると頭の上に載せてた手を優しく動かした。
『あ、あの…?』
頭を撫でられていることに気付いた名前は冨岡を見上げる。
冨「…身寄りがないのだろう…俺と一緒に来ればいい、俺の継子になれば…」
冨岡が口にした言葉に名前ではなく冨岡が驚いていた。
『……鬼を滅ぼしたいです、お願いします、鍛えてください』
どうせ自分はもうひとりぼっちだ。
後悔はしたくないし、もう覚悟は出来ていた。
冨「あぁ…」
冨岡が優しくフッと笑みを零したのを見て思わず顔が赤くなってしまった。
『…(暗くてあまり分からなかったけどこの人意外とかっこいいんだ…)』
冨「先ずは弔ってやるのが先だ」
冨岡に見惚れていたが弔ってやる、の言葉に思わずハッとした。
『はい…!』
人を寄せつけない水柱の隣を1人の隊士がずっといると噂をされ始めたのはそう遠くない先のことだった。