小話
□俺達の日常。
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【そういうものなのです。】
「櫻ってすっごい健康オタクだよね」
俺は櫻が食べてるお弁当を見ながら呟いた。
見るからに栄養バランスの整った、冷凍食品やらの既製品は一切入っていない、完璧な手作り弁当だった。
前に一人暮らしだって聞いたことあるからきっと全部自分で作ってるんだろうなあ。
「そうか? 俺は別に好きなもの入れてきただけだけど」
櫻が椎茸をつまみながら不思議そうに首を傾げる。
「それが好きなの〜?」
野菜を基調としたそれは、確かに健康的だけど俺の嫌いなものばかりだった。
「そんなのがおいしいんだ……」
椎茸をほおばる櫻を見ながら、俺はその味を思い出し顔をしかめた。
「まあ、そんなにおいしいものでもないけどな」
「へ? だって好きなんでしょ?」
「ああ」
当然、と言わんばかりに櫻は頷く。
「……ねえ、質問。櫻的にそのお弁当はおいしいの?」
「いや、だからそんなにおいしいものじゃないって」
「でも好きなんだ」
「ああ」
当然、と言わんばかりに櫻は頷く。
要するに、まずいけど体に良いから好きなのか。
「……それを健康オタクっていうんだよ」
全く自覚のない櫻に向かって、俺はそのどうでもいい事実を教えてあげた。
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リーダー登場。