小話
□俺達の日常。
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【作戦会議】
「お前ら! 作戦会議だ!!」
自室でごろごろしていた蘭とユウを叩き起こし、俺は意気込んで叫んだ。自室と言っても薄いカーテンで区切られているだけの狭い空間だ。
男三人の貧乏暮らし。これはこれでまあ楽しいんだけど、俺的にはやっぱり音楽一本で食っていけるようになりたいわけよ。
「そろそろ売れてきてもいい頃だと思うんだよ。俺達に足りないものってなんだ? 歌詞も曲もルックスも、悪くはないと思うんだけどなあ……」
俺達三人はカーテンを全て開け、元は一つだった部屋の真ん中で円陣を組み、今後についての話し合いをすることにした。要するに作戦会議だ。
「次のライブ……」
「次のライブ?」
何か考えている様子のユウに視線を向け、俺は次の言葉を待つ。
「ステージ上でベロチューでもしてみよっか」
「……は?」
俺は目を丸くしてユウを見る。
「……誰と誰が?」
蘭は蘭でちょっと食いついてるし。
「僕は嫌だから……君達二人?」
「はぁ!? 俺だって嫌だよ! つーか何でそんなことしなきゃなんないんだよっ!!」
当たり前のように淡々と話すユウに向かって俺は叫ぶ。
「だってさ、お客さんは女の子の方が多いでしょ? どんなに否定してたって女の子はホモネタが好きなものだよ」
「……それ一部限定だろ」
「そうだよっ! そんなわけあるか!!」
蘭と俺の非難にも全く動じることなく、さらにユウは続ける。
「あんまり女の子に幻想を抱かない方がいいよ」
女の子と付き合ったことすらないこいつが、まるで女を全て知ってるような口ぶりで話す。
根拠のない自信と分かっていながらも、その姿はなぜか俺の目には大きく移った。
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アキバくんだからさ。