小話
□俺達の日常。
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【真実の話】
「少年、もういいのか?」
「あ、はい! ごちそうさまでした!!」
街で偶然キメラさんに会った俺は、図々しくも昼ご飯をごちそうになっていた。
ちょっと遠慮はしてみたが、空腹には勝てずお言葉に甘えることにした。
「……実は俺、キメラさんてもっと怖い人だと思ってたんですよ」
無口なキメラさんとの会話に詰まり、失礼かとは思いながらも前から考えていたことを口にした。
「ああ、よく言われる」
相変わらず表情は固いけど、その口調はどこか優しさを含んでいた。
「でも気をつけろよ」
「へ?」
真剣な眼差しで俺を見ると、声を殺して囁く。
「本当に怖いのは……タツヤだ」
キメラさんは誰かに聞かれては困るようなそぶりで声を潜めて言った。
「は……や、やだなあ、キメラさんてば! あんな優しそうなタツヤさんが怖いわけないじゃないっスかー」
キメラさんなりの冗談だと判断した俺は、一瞬戸惑いつつも大げさに笑ってみせた。
「……優しそう、か。少年、お前いつか地獄を見るぞ」
キメラさんの目は真剣そのものだった。むしろ恐怖に震えているようにも見えた。
「お前もいつか分かる時が来るさ……」
ぼんやりとどこか遠くを眺めるキメラさんは、まるで狂犬に怯える子犬のような目をしていた。
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頑張れキメラくん!