小話
□俺達の日常。
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【嫌よ嫌よも好きのうち】
『こんにちわ〜! ダイヤモンドダストでぇす』
『よろしくお願いしま〜す』
甘ったるい、少しイライラする猫撫で声を出しながら登場する新人アイドル。
「キィちゃんってこの子達好きなの?」
それをテレビにかじりつくように見ているキィスに向かって俺は聞いた。
「え? まさか。はっきり言って大嫌いだよ。暇だったから見てるだけ〜」
そう言いつつも、画面から視線を反らさずに答える。
「そんなに真剣に見てるのに?」
怪訝に思った俺は、わざと画面の前に出てこう聞いた。
「嫌いだからこそ見てるんだってば。どんなに嫌な人間だって何か必ず良い所があるはずでしょ? 俺はそれを見つけたいんだよ。たまに興味すら湧かないような人間もいるし、嫌われてるだけ彼女達はまだマシな方じゃないかなぁ?」
キィスは俺の頭を手で退かし、再び画面に視線を戻した。
「……キィちゃんてさ、本当に大人だよねぇ」
キィスの横顔を見ながら呟く。
その表情は、普段の猫被りなど想像できないほど大人びていた。
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唯一逆らえない相手。