小話
□俺達の日常。
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【天使と悪魔】
「丙ー、遊びに来てあげたよ! 何か楽しいこと……って、うわ、ダサッ!!」
人の家へ何の遠慮もなく上がり込んで来たキィスが、部屋の掃除をしていた俺の姿を見て驚愕の声をあげる。
「あぁん!?」
今日の俺のファッションテーマは『モダンとレトロの狭間で』
祖母から譲り承けたもんぺを自分なりに改良し、クールに着こなすナイスガイ。
「それをダサいとはなんやーっ!」
「ダサいもんはダサいよ!! 本当隣歩きたくないんだけど」
キィスは冷めた瞳で数歩下がる。
「ふんっ、お前に俺の素晴らしいセンスは一生わからへんよ」
俺は負けじと目を細めて見返してやった。
「……ていうかさあ、丙ってアレだよね」
「は?」
頭のてっぺんから爪先まで、相変わらずの視線を送りながらキィスが続ける。
「人と同じじゃ嫌だ?」
「おう」
「平凡にだけはなりたくない?」
「おう」
「いつかでっかい人間になってやる?」
「おう!」
突然のキィスの言葉にも躊躇なく即答する俺。
「でもさ……つまらなくて頭の弱い普通の人間程よくそういうことほざくよねっ」
輝かしい程の純粋なキィスの笑顔。何の悪気もないと見せかけて人をどん底へと突き落とす。
俺はその時、今まで生きてきた人生の全てを否定されたような、なんとも言えない虚しさで胸が張り裂けそうだった。
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自称お洒落さん。あくまで自称。