小話
□俺達の日常。
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【無礼講】
ライブ終了後の打ち上げは、貸し切った訳でもないごく普通の居酒屋で、俺達はメンバー、スタッフ皆揃って迷惑な集団に成り果てる。
「ほーら、恥ずかしがらないでこっちおいで〜」
「ねえ、次は誰が勝負してくれるのー?」
「あっはっはっは! 俺人生楽しすぎてやっばいわー」
キス魔タッちゃん。
酒豪キィス。
笑い上戸丙。
もうかなり出来上がってるみたいだ。一般客や店の迷惑も考えずにお祭り騒ぎ。
これは後始末が大変だな、なんて考えながら、酒の飲めない俺は同じく酒の飲めないキメラくんの隣に座る。いつの間にか二人避難するように隅の方に追いやられていた。
「今日は一段と激しいな……」
煙草を吹かしながらキメラくんが呟く。
「確かに」
漂って来た煙を手で軽く払い、俺はキメラくんを横目で覗き見た。
突然だが、はっきり言ってキメラくんは男の俺から見ても格好良い。
普段のクールな振る舞いも、ライブ中の攻撃的なギターパフォーマンス、それでいてしっかりとした旋律も、全てにおいて惚れ惚れしてしまうし、尊敬すると言っても過言ではない。
でも……
「でもさ……今のキメラくんは、ちょっと格好悪いな」
俺の声は周囲の騒音にかき消された。
いつも以上に真剣な表情をしたキメラくんは、煙草片手にリンゴジュースを飲みながら寿司のネタにこびりついたワサビを箸で器用に取り除いている最中だった。
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刺激物が苦手。