小話
□俺達の日常。
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【喧嘩するほど仲が良い?】
「君とはもうやっていけない」
「それはこっちのセリフだ」
俺達売れないヴィジュアル系バンド、resonance。
人気も無けりゃ金も無い。
割と広めなボロアパートを借りて、メンバー三人で同居している。
俺が部屋から出ると、広間で蘭とユウが何やらもめているようだった。
「お、おい……どうしたんだよ」
普段からは想像も出来ないような空気に、少したじろぎながらも 聞いてみた。
二人はお互いの胸ぐらを掴んで、火花を散らしている。
「うるさい。お前には関係ない」
蘭が俺を睨む。いつもボケッとしてる奴だから気にしてないけど、こいつ意外と目つき悪いんだ。
俺はまさに蛇に睨まれた蛙状態。
「僕達……もう駄目かもね」
ユウはユウでおかしなこと言ってるしっ!
「な、何言ってんだよ!!」
「解散しよっか。いつまでたっても売れないし、これ以上自分勝手な蘭と一緒にいたくないしね」
ユウはとんでもないことをさらりと言ってのけた。
「ちょ、ちょっと待て! 勝手なこと言うなよ!! あ、そうだ、俺さ、歌詞書いたんだけど、二人で曲つけてくれよっ。な、なっ!?」
「…………」
俺が何を言っても二人は無反応。視線を合わせようとすらしない。
「な、んだよ……っ! 何でだよっ!! 俺達三人でresonanceやってくって決めたじゃんか。俺はもう、売れるとか売れないとかどうでもいい。ただお前らと一緒にいたいんだよっ!!」
うわ、俺泣いてるよ。仕方ないじゃん、これは俺の本心なんだから。そりゃ、こいつらすげえムカつくよ。いっつも俺のことからかいやがって。けど一緒にいて楽しいし、やっぱ好きなんだよ俺は、こいつらが。
「だから……解散なんて、言うなよ……っ」
最後の方はもう言葉になっていなかった。
俺は泣き顔を見られまいと下を向いた。