小話

□俺達の日常。
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【笑顔の下に隠された黒い顔】

 所属バンドresonance。2*歳童貞。ボーカル担当マサト。
 ただ今非常に緊張しておりまス。

「はい、これ差し入れ。皆で食べてね」

 そう言って何やら品のいい紙袋を差し出したその人こそ、俺が世界で最も尊敬しているボーカリスト、[REQUIEM]のタツヤさんなのだ。

「あ、あっ、ありがとうございますっ!!」

 俺はしどろもどろしながらそれを受け取った。

 まさか俺達なんかのライブにタツヤさんに来て頂けるとは!
 タツヤさんだけじゃない。同じ[REQUIEM]のキメラさんまでも後ろに控えている。
 今まで生きてきて一番感激してる。

「良かったよ、ライブ。マサトくんっていい声してるね〜」

 俺が何を話していいのか分からずオドオドしていると、タツヤさんが優しく笑いかけてくれた。

「そっ、そんなっ! とんでもないです。タツヤさんと比べたら……いやいや、比べるなんて恐れ多い!!」
「あはは。……君、可愛いしね」

 タツヤさんは俺の髪に軽く触れると、顔を近づけ耳元で囁くように言った。

「へ……?」

 な、なんだろう。今の違和感……
 一瞬、背筋に何か冷たいものが走ったような。

「……タツヤ、そろそろ行かないと打ち合わせ始まるぞ」

 黙って俺達の様子を見ていたキメラさんが、楽屋の時計を指差して言った。

「あ、本当だ。じゃあね、マサトくん。今度どこか遊びに行こうか……二人で」

 楽屋のドアに手をかけて、恐ろしいほどの綺麗な笑顔で言うタツヤさん。
 ……またしても、寒気が。

「……少年、気を付けろよ」

 タツヤさんが部屋から出ると、キメラさんが俺を哀れむような目で見ながら呟いた。

「え、何がですか?」
「……タツヤさ、魔性のゲイなんだよ」

 せいぜい気をつけろよ、と言って楽屋を出る。
 最後に顔だけ覗かせて、こう言い残していった。

「ついでに言うと、他人を苦しめることでしか快感を感じない、かなりのサディストだ」

 じゃ、と片手を軽く上げてドアを閉めた。コツコツという乾いた足音が小さくなっていく。

 取り残された俺は、紙袋を持ったまましばらくその場に凍りついていた。

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狙われちゃった。
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