小話
□俺達の日常。
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【似てるよね?】
「さあ、ここで問題です」
本番前の緊迫した空気をぶち壊すかのような明るい声で、タツヤが俺達を見渡した。
「きらびやかなメイクと衣装で、男なのに女の格好している人とかいて、独特の歌、独特の振り付けで観客達を湧かせるものなーんだ?」
と、楽しそうに笑いながら言う。
「それクイズ?」
「簡単すぎない?」
「俺達のことじゃないのか?」
「そうそう、俗に言うヴィジュアル系バンド?」
突然何の意図があるのかすら分からない問題を出すタツヤに向かって、俺達は怪訝に思いながらも答えを返す。
「残念、皆はずれ!」
タツヤは更に楽しそうに笑ってみせた。
「え、違うの? じゃあ答え何?」
「それはねぇ……」
タツヤは一呼吸置いてからこう答えた。
「歌舞伎」
一瞬間が空き、俺はさっきの問題を頭の中で整理してみた。
「……確かに」
「す、すげぇ」
「何か複雑な気分だな……」
「う、うん。別に嫌って訳じゃないんだけど……何か、ね」
皆思うことは同じで、俺達は顔を見合わせてそう言った。
「あ、そろそろ本番だ。皆、いいライブにしよう!」
「お、おー……」
タツヤは天使のような笑顔で、見事俺達の士気を奪ったのだった。
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……怒らないでください。