短編・中編置き場

□行き場のない想い
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 いつも、オレの事なんて何とも思ってないだろう。寧ろ彼女の『普段』に、オレは住む事さえ許されてないかもね。


「……ふっ」
 学校の廊下、昇降口。
 二階の教室の窓から見下ろした先の校庭で、キャッキャと賑やかそうに笑う君を。見なきゃいいのに視界に収めて認識しては一つずつ確実に澱んでいく。
 思わず笑っちゃった。
「……」
 募るのみで、少しも減る事のない想い。
 一体どう……しよっかね?
「……責任取って欲しいなぁ」
 ……オレじゃなくてもいいんでしょ?
 そう言えないのはなんでかな?
「……なんで、って」
 自問したら、自分がひどく滑稽で。校庭を見下ろす目を、静かに一瞬伏せてまた口元だけで笑った。





 前までは月2くらいだったのに。今じゃ週1くらいの気がする。


「それでねっ!なんて言ったと思う!!」
 ……知んないよ。
 興奮するキミ。冷めていく、オレ。
 放課後のオレの教室と。部活が無くなってからのオレは、すっかり『愚痴り場』になった。『相談相手』、ではない。
「『そんなにイヤなら終わりにしてやったっていいんだぜ』だって!もうっアタマにくるっ!!」
 尋ねておきながら、オレの言葉は待たずに正解が発表された。
 相変わらずただ『居る』だけの。『聞き手』という役割。話しの一方通行具合とか。『存在理由』が分からなくて正直……ちょっと泣きたい気分。

 キミは知ってるかい?
『自分』……って。他者に認識されて初めて『存在』が確認できるんだよ?
『誰か』に映って初めて『オレ』が形成されるのに。
 目の前のキミにさえ映されないオレは何?
 ただ居れば、在ればいいだけなら。おウチで縫いぐるみにでも聞かせてあげてよ。
 まるで『オレ』という『ニンゲン』は。……存在が許されてないみたいじゃない。

 ……解ってるよ。
 聞いて欲しいだけなんだ、って。
 意見を求めたいんじゃないんだ。答えは自分の中にあるけど、憤りや悲しさを。他者に話すことで、少し整理したいんだろう、と。

「むっかつくぅ!」
「そうだね」
 ……オレも正直ムカついてるんだけど。上辺だけ、にこやかにしていた。
 解ってるよ、と。
 ただにこやかに出来る程まで悟ってないし。まして聖人じゃないんだからさ。
 当初抱いていた、憤りや彼女と『誰か』の諍(いさか)いやノロケ話に湧く複雑な感情も。
 今は頭が言うんだ。『もう考えるのはヤメにしないか』って。
 だって……オカシクなりそうなんだ。何も考えなければただ。純粋なままでいられるし……多分。

『もう堪えられないんだ』と言わせて。そしたらお願い。キミの好きなヒトの言葉を。
『……そんなにイヤなら終わらせてやってもいいんだぜ』ってヤツを浴びせる様に罵りながら投げ付けて……。少し……救われる。少しだけ報われる。

 まだ『好き』、そういうピュアな想いで。叶わなかった、と酔えるから……。








おわり。
 

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