短編・中編置き場
□怪我の功名
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スゥー、っと。
「……」
一筋の切れ目が入って。
其処から。
その筋をなぞる様に赤が染みてきて染まっていった。
赤い筋が。ぷくぅ、っと。一箇所で丸みをおびて。球を描き作り上げながら少しずつ大きくなっていく。
「……おぉ」
「……何をしている」
「……ん?見て……私、良かった。ほら、ちゃんと赤いよ?」
ピっ、と。
授業中、右の人差し指の。爪の生え際に速い痛みが走った。
あんまりに速く感じたから。もしかしたら切れてないかもな、って思ったのに。
わら半紙の、自習プリントの端で。今日も結局切ってしまった。
中々そそっかしく生きている私。
でも。何だか今日はいつもと違って。御丁寧に血まで出てきてしまった。
右隣の席の真田に
「見て見てホラ。……A型ぁ〜」
一緒一緒、とヘラヘラしながら見せていたら。
隣の席の男の眉間の皮膚が。緊急召集を掛けられた様にギュウっと寄り合ってシワが深く刻まれていた。
「……おこった?ゴメン」
調子に乗って、余計ニラまれるのも、彼の機嫌を損ねるのも楽しくないから。真田に見せていた手を引っ込めて。ポケットから出したティッシュで取りあえず血を拭った。
その内に治まるかなぁ?って思ったんだけど。
塞がるのを待っていたんだけれども。シャーペンを握っていた指先が濡れている感触がして。
「……ありゃ」
バリバリに動かし続けていたので治まらなかったみたい。水みたいにツーっと。もう少しで爪の先へと滑っていこうとしていた。
こうした時に限って。
バンソコウ……丁度切らしてたりする。
「……ほら。これを使うがいい」
隣から。
何だ絆創膏も持っていないとはたるんどる!!……という言葉が。言わなくても聞こえてきそうな溜め息交じりの声がして。
「と……特別だぞ」
え?っと横を向いたら真田の左手が。その手には小さい様に見えるバンソコウを差し出してくれていた。
……特、別?
「……ありがとう」
私に……特別にくれるの?とか。
こっそり想い続けていたけれど。この朴念じ……イヤイヤ。中々伝わりづらくって。
ちょっと……『特別』って響きに軽い感動すら覚えそうだった。
「……っ!」
ありがとう、と。有り難く頂戴したその『バンソコウ』はヒドく愛らしい……。
「……ぷぅ……さん?」
くまの……あの愛らしい……。
「うむっ。実は……そのぷぅさんの絆創膏には秘密があってな。どんな傷でもペタリと一度貼れば不思議と綺麗に治る特別な物なのだ!」
……お母さんが。
小さい頃、貼って下さったんだって。……愛情たっぷりの微笑みで。
怪我も……そうか。気の持ち様かもな……あながち無下には出来ぬ考え。
その『特別』、って意味かぁ……。
……っていうか。
「……コレかぁ」
マジマジとバンソコウのビニールの包みを見つめ。剥がしながら呟いて。
っていうか……夢あるわぁ。意外に。
『チチンぷいぷい』すら「効くかーっ!」と反抗する様になっていた、自分の濁りがイヤになってきそうだった。
「……ランドの『ハチミツ狩り』とか。……好きだったりする?」
たわけ!!って。言われるかな?
別に『ぷぅさん』が好きなワケじゃないかも知れないのに。なんか……すごい興味が湧いてしまって。ワクワクしていた、解答に。
隣見たらまた不機嫌そうで怒られるのかな?って思いながら。もらった『ぷぅさん』を指に貼っつけて尋ねたら……。
……。
パァァァァっ!!って。
……眩しいや。こんな顔するんかいっ。
「……家に。この前ガチャガチャで出たカワイイのあんだけど……よかったら持ってくるね」
「いっ、要らぬわ!!」
「はいはい」
……んふふっ。
……そうか。コレだったか!!
朴念仁の関心を捉えたり!!
もっ、いやらしいくらい喰い付かせて頂きますよっ!!えぇっ。だって折角なんだか真田くんが釣れそ……ゴホンっ。
真田くんとの距離、縮め隊!
共通話題を見つけられたんですもの!!
今日のケガ……。
これがホントの……。
『怪我の功名』。
……カワイイ奴め。
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下らなくてスミマセン。
なんで真田くん=『プ○さん好き』って妄想か、っていうと。
大典さんが(真田役の声優さん)ハチミツ狩りが大好きだ、って聞いた事があったから(レディオから頂戴ネタ)。
…そんだけデス。
ゴメンなさい。