ハクシュ文(過去)

□スキデイルコト
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「髪…伸びたね…。」










そんなに小さくはないはずの声を放って







ソファに座るヒロの横を陣取って髪に触れた









「そうかなぁ…」







よくわかんない雑誌に目を落とすヒロは俺を見ずに







大きくも小さくもない声で口を開いた








そっと髪に指を絡ませて









ふわふわな手触りは心地好い







「ほんと…伸びた。」








「ツアーで切りに行けなかったしねぇ…そろそろ切った方がいいかなぁー…。」









「そんなことないよ。長い方が手触りいいし好き。」








「そー…?じゃあ今度、坊主にでもするかな。」








本気じゃないくせにいつも俺を困らせる









冗談を笑わずに言うヒロは










俺の話を聞いてない証拠










ヒロの興味を引きたくて触れたって話し掛けたって









そんなもの、よくわからない雑誌には勝てない









なんだか虚しくなってきた…







「はぁ……。」








溜息を吐くと、少しヒロに聞こえたのか







やっぱり雑誌を見たままだったけど…







少し俺を気に留めてくれた







「藤ー…じゃあもし俺が腰くらいまで髪伸ばしても好き?例えば…アメリカのヘビメタ野郎みたいな感じ。」










「……ヒロの髪だけが好きな訳じゃないから…俺はヒロがどうなったって好きだよ…。」







分かってるくせに聞くなよって意味を込めて言葉を投げると









雑誌に目をやってたのは俺の方で








ヒロの顔に目線を動かすと







目が合って







すげえ笑顔で幸せそうに








「知ってる///。」










そう言うともう一度笑って、よくわかんねえ雑誌にまた目を落とした














ねえ知ってる?










その自然なヒロの言葉に










いつもいつも幸せを分けてもらってる









だから明日も明後日も何年後だって








ヒロに触れてみたり









話し掛けたり









やめることはできないんだよ












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