小説

□恋人は彼氏?
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*恋人は彼氏?*

朝。いつもならまだ寝ている時間だが、その日キラは早くに目覚めていた。
特に用があり急いでいるわけでもなく、そうかといって2度寝しようとしているわけでもなく。何をしているのかというと……鏡の前で化粧をしていたりする。

「えっとー、コレはこうやって‥その後にコレやって〜‥っと…」

悪戦苦闘など、その単語自体知らないような手際の良さでひょいひょいと自分の顔を作っていくキラ。すべて同じバイト先の女友達から教えてもらった技だった。
なぜそんなことをキラがしているのか?そう思う人がほとんどだと思うが、それは後々分かることである。とにかく、キラは慣れない早起きをして化粧をしているのだ。

すると、ちょうどキラの化粧が終わった頃‥玄関先から、アスランの声が聞こえた。

「キラ〜?俺もう大学行ってくるからな〜」

「いってらっしゃ〜い!」

いつも通りの朝のやりとりだった。アスランが声をかけ、キラは起きていれば元気良く、寝ていれば眠気たっぷりの声で返事をするのだ。
どうやら今日は起きているらしい。珍しいなー‥と思いながらアスランは家を出て行った。
バタン‥と扉の閉まる音がし、暫く静寂が訪れる。

「…行ったね‥vvよしっ!」

キラはニヤリ‥と何か企んでいる時の笑みを浮かばせ、すくっと立って押入れを漁り始めた。

「え〜っと…確かこの辺に入れて……あ、あったあった!」

目当ての服を引っ張り出し、ゴソゴソ着替え始める。

「……ふぅ!出来上がり〜vv」

鏡の前に立ってみると、軽い化粧をした髪の短い女子高生がそこに立っていた。無論、キラである。

「わぁ〜‥やっぱり僕って可愛いなvv」

鏡に映った自分の姿を見てうっとりとため息をつくキラ。他の男がやれば何とも不気味なものがあるが、そこはやはりキラである。そこらの女の子よりも数段可愛い。
暫く鏡を見つめていたキラは、ふと自分の髪の毛を見やり‥押入れの中の制服と一緒に入っていた袋から、自分の髪の色と同じ色の長い毛を取り出した。

「やっぱ‥これ付けなくちゃかな。」

言いながら自分の髪の毛に付け、軽く手櫛で整える。

「これで完璧!」

その姿はどこからどう見ても女の子そのものだった。キラはじっくり鏡で全身をチェックした後、満足げに頷いて学生鞄を取り出す。

「んと…携帯に手帳に化粧品、筆記用具に‥‥へぇ、今時の子ってこんなのも持ってるんだ〜」

バイト先の女の子に用意してもらった鞄の中身を見て感嘆した声を漏らすキラ。ある程度見終わった後、鞄を閉めて持ち上げ、部屋を出た。

「さってと、行ってこようかな」

玄関に向かい、靴を履いていると‥後ろから、にゃ〜という声ガ聞こえた。振り向いてみると、愛猫の黒猫‥ナイトが不思議そうにこちらを見ている。
キラはくすっ‥と笑ってその頭を撫でながら、言い聞かせるように言った。

「それじゃ、僕はアスランの大学行ってくるから…ちゃんといい子で待ってるんだよ?」

とんでもない爆弾発言である。アスランが聞いたら、気絶させてでも止めようとする発言である。
しかし不幸にも、聞いているのは何の力も無い愛猫のナイトだけ…。理解しているのかしていないのか、了解という感じでうにゃ〜と鳴いて見送る態勢だった。

「じゃあねvv」

ルンルン気分で玄関を出て鍵を閉めるキラ。足取り軽く、スキップでもしそうな勢いでアスランの学校に向かっていったのだった…
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