time goes by
□第一章
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人は人生に何度恋をするのだろう。
いま自分がしている恋が、人生の中で何番目の恋になるのか考えながら恋するのだろうか。それとも、誰もがこれが最後の恋だと思って人を好きになるのだろうか。
「そんなの決まっているじゃない。『運命の恋』をすれば、それが最初で最後の恋ってことだよ」
私の疑問に一花(いちか)はそう言う。
『運命の恋』だなんて、まだ小学生だというのに、いったいどこでそんな言葉を覚えてきたのだろうと不思議に思いつつ、そう言えば最近一花が夢中になっている少女漫画を思い出した。
確か主人公の女子高生と同級生の男の子の純愛物語だったはずだ。
「運命の恋なんて本当にあるのかな?」
素直な疑問を口にすると、一花はむきになって反論してくる。
「あるよ。絶対にある」
「……」
前から思っていたことだけど、一卵性の双子だというのに、私と一花はずいぶんものの考え方が違う。
私は一花のように『運命の恋』なんてものがあるとは思えない。
だってもし本当にそんなものがあるのなら、私と一花がこんな風に離れて暮らすことも別々の名字になることもなかっただろう。
私たちのお父さんとお母さんだって、かつては本気で恋をしたはずだ。だから結婚して、私たちが生まれたのだと思う。でも、その恋が終わってしまったから、二人は離婚した。そのせいで私と一花は離れ離れになってしまったんだもの。
だけどそんなことを一花に言ったら、きっと一花はひどく腹を立てるだろう。そしてそれ以上に傷つくだろう。だから敢えて言わない。
「千裕(ちひろ)は、何か冷めてるんだよね。でも、きっといつか千裕にも本当に好きな人が出来れば分かるよ」
偉そうにそんなことを言う。
そう言う一花だって初恋もまだなくせに。
だが皮肉なことに、恋を夢見る一花よりも、私のほうに早くそれはやってきたのだ。