First Love
□第一話・冷静な視線
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恋愛なんてくだらない。
ずっとそう思っていた。
First Love
それまでの桜井薫(さくらいかおる)の人生は、いたって順風満帆なものだった。
子供の頃から何不自由なく育ち、勉強もスポーツも常に他人より上の成績で、自分で言うのもなんだがガールフレンドにも不自由したことはない。大学に入って東京で一人暮らしするようになってからは、家庭教師などのアルバイトをしながら、以前よりもっと悠々自適な生活を送っていた。
いずれは実家のある京都へ帰って家業を継がなければならない。そんな思いがあるからこそ、なおさら「今」という一瞬をおもしろおかしく過ごしたい。そんなふうに割り切っていた。
その夏、薫が大学の同級生に誘われて、その海沿いの町を訪れたのもほんの気まぐれだった。
「お前の実家、近くに海ないだろ?たまには夏の間中を海のそばで過ごしてみないか?」
そんな誘いに乗って、田舎に帰省するという水野晃一(みずのこういち)にくっついてきた。好奇心と暇つぶし。そんな軽い気持ちで。
「なあなあ、海で可愛い子をナンパしようぜ。お前だったらよりどりみどりだろ」
晃一の半ば本気の冗談に、薫はただ笑ってみせる。
確かに、こちらから声をかけなくても、薫の綺麗な顔に寄ってくる女の子は多い。現に今だって大学入学以来の告白記録更新中なのだから。
(女って、本当にルックスがよければそれだけでいいんだな。俺の中身なんか何にも知らないくせに)
自分に近づいてくる女の子たちを、ついそんな醒めた目で見てしまう。だから簡単に優しくして、そして簡単に冷たくしてしまう。
「本当にお前って顔は綺麗なのに性格はサイテーな。それとも女に興味ないの?」
晃一はからかい半分にそんなことを言う。