First Love
□第六話・突然の再会
1ページ/3ページ
千裕との再会は思いがけない形でやって来た。
それは本当に偶然の出来事だった。冬休みに入ってから薫がバイトしている喫茶店、信じられないことにそこに千裕が現れたのだ。
「いらっしゃいませ」
そう言って、店に入ってきた客を見たとたん、薫は自分の目を疑った。
(え?まさか……別人だよな?)
そう思いながら何度も顔を見て確かめる。その席は薫の担当ではなかったので、カウンターの中からちらちらと視線を送る。
一人は母親だろうか。ぴしっと和服を着こなした女性と、それよりもう少し年配の女性。その二人と向かい合うように座った、白いフリルのついたブラウスに深いワイン色のジャンパースカートを着た千裕――らしき女の子。
夏に出会ったときより髪は短くなって、さらに大人っぽい印象になっている。とても高校生には見えない。
楽しげに会話する二人の女性とは対照的に、窓の外を物憂げに眺めている。相変わらずの冷たいくらい醒めた瞳で。
(やっぱりあの子だ)
薫は思わずじっと千裕を見つめた。
千裕は連れの女性たちの会話にそつなく相槌をうちながら、でも心はここにあらずといった感じだ。その視線は、通りを行き交う人たちの様子を追っているようだが、やはりそこにも千裕の心はない。
まるで千裕の心はいつもどこか遠いところ――ここではないどこかに在るみたいだ。
薫は心の中で千裕に問いかける。どうして東京にいるのか。一緒にいるのは誰なのか。そして、千裕が本当に見ているものは何なのか。
薫があまりに熱心に千裕のことを見ていたせいだろうか、
「あの窓際の子、お前のタイプなの?」
バイト仲間がからかうように声をかけてきた。
薫は一瞬だけ顔を赤らめると、
「そんなんじゃないさ」
怒ったように顔を背けた。