First Love
□第十話・隠れた本心
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「それってどういう意味だよ?」
薫が尋ねると、晃一は少しだけ顔を歪めて首を振った。
「悪い事は言わない。軽い気持ちで高岡に近付くのはやめろ」
「軽い気持ちなんかじゃない。俺――俺、今度こそ真剣に好きなんだ」
薫は思い切ってそう言った。晃一はますます悲しそうに顔をしかめた。
「……それなら尚更やめておけ」
「何でだよ?どうして駄目なんだよ?」
「お前が傷つく」
間髪入れずにそう言う晃一に、薫はぽかんとしてしまう。
晃一の言っている意味が分からない。
「何で俺が傷つくんだよ?お前、俺が彼女に振られるって決めつけてるわけ?そんなの告ってみなきゃ分からないだろ?」
「さあ、どうだろうな」
晃一は冷たく言い放つ。その途端、薫はあることに思い当たった。
「もしかして、お前も彼女のことが好きなのか?だからそんなこと言っているんだろう?」
「違うよ、馬鹿」
晃一はあっさりと否定する。けれど薫には納得できない。
「嘘だ。だって、そうじゃなかったら何で今回に限ってそんなこと言うんだよ?今まで、お前が俺の恋愛に口出ししたことなんて一度もなかったじゃないか」
なおも薫が食い下がると、晃一はあきれ返ったように大きなため息を吐き出した。それから、薫の目をまっすぐに見ながら、
「言っとくけどな、薫。お前の今までのアレは『恋愛』なんて呼べるようなものじゃないぞ。単なる遊びか暇つぶしってところだ。お前にとっても、相手にとってもな」
「何だよ、それ」
「いいから聞け。――だけど今回は違うんだろ?本気で好きになったんだろ?」
薫は黙ってうなずく。