猫目堂
□7th.翼あるもの
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とある山奥の小さなバス停の近くに、小さなお店があります。
その扉には、こんな看板が・・・
《喫茶・雑貨 猫目堂》
『あなたの探しているものがきっと見つかります。
どうぞお気軽にお入りください』
さあ、扉を開けて。
あなたも何か探しものはありませんか?
【猫 目 堂 7th】
― 翼あるもの ―
今日もまた、彼は重い足取りで『猫目堂』のドアを開けた。
カランカラン……
軽やかで澄んだドアベルの音は、彼の沈んだ気持ちをなおさらに空しくさせる。
「いらっしゃいませ」
カウンターの向こうから笑顔でそう言いかけた二人の店員は、そのお客を見て言葉を飲み込んだ。そして、お客の浮かない顔色がうつったようにさっと表情を曇らせた。
「今日も駄目だったよ」
お客はカウンター席に腰かけて、重苦しいため息とともにそう言う。そのまま視線を伏せて、眺めるともなく、すっかり荒れた自分の両手を見つめている。
小さな背中には、片方だけの翼と無残にもぎ取られたもう片方の翼の残骸。
何度見ても痛々しいその様子に、二人の店員はますます顔色を暗くする。
「僕の翼は、いったいどこへ行ってしまったんだろう?」
誰に問うともなく呟かれる言葉に、
「アラエル、あのさ……」
黒髪の店員――カイトが心配そうに声をかけようとするのを、金髪のラエルがそっと押しとどめる。
問いかけるような眼差しを向けるカイトに、ラエルはただ静かに首を振る。
そんな二人の様子にもまったく気がつかず、お客はがっくりと頭を垂れたまま動かない。小さな唇からは、飽くことなく何度も何度も大きなため息が吐き出される。
もうすっかり見慣れてしまった光景。
こんな状態がひと月近く続いていた。