LOVERS
□君が大人になる前に〔前編〕
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※あらかじめお断りしておきますが、このお話はハッピーエンドではありません。
僕たちはもう子供ではない。
僕たちはまだ大人ではない。
未来はずっと先で、僕たちはその果てを知らない。
ねえ。
未来には何が待っているんだろう。
たとえどんな未来でも、これだけは誓える。
君の笑顔のそばに、僕はいつもいるよ。
『First Love』side story
●君が大人になる前に●
〔前編〕
本当のことを言えば、僕は父の再婚には賛成ではなかった。
当時、僕は中学三年生で、自分で言うのも何だけどけっこう多感な年頃だった。それに高校受験も控えていたし、環境が変わるのはあまり好ましくなかったのだ。
けれど反対するはっきりとした理由もなく、僕は父に言われるがまま、父の再婚相手とその娘との食事会に参加した。
相手の女性とは仕事の関係で知り合ったと父は言っていた。
彼女には僕より五歳年下の小学生の娘がいて、再婚後は僕たちの家で四人で暮らす予定ということだった。
正直僕はうんざりした。
小学生の女の子なんて、きっとうるさくて厄介に違いない。
そう思ったからだ。
「柊(しゅう)は嫌か?その……、父さんが再婚すること」
微妙な空気を感じ取ったのだろう。
待ち合わせのレストランへ向かう車の中で、父は遠慮がちに訊いてきた。
僕は父の顔を見ないようにして、ひたすら車外の景色を眺めていた。
「別にいいよ、俺は」
「でも……」
僕に向かって心配そうな顔を向ける父に、
「いいから、前向いて運転しなよ。受験前に事故るなんて、俺はごめんだぜ」
今思えば、きっと僕は軽く反抗期だったに違いない。
自分のことを無理して『俺』と言っていたのがそのいい証拠だ。
もっともいまだに僕は表向きは自分のことを『俺』といい、こうして頭の中で何か考える時は素の『僕』に戻るわけだが。