LOVERS
□君が大人になる前に〔後編〕
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※あらかじめお断りしておきますが、このお話はハッピーエンドではありません。
僕たちはもう子供ではない。
僕たちはまだ大人ではない。
未来はずっと先で、僕たちはその果てを知らない。
未来がどんなものかなんて分かる人は誰もいない。
だからこそ楽しいと思わないか?
期待と不安と。
その両方を抱えながら。
僕たちは少しずつ大人になっていく――。
『First Love』side story
●君が大人になる前に●
〔後編〕
家に続く道を沙都子と並んで歩きながら、僕は何となく気分が重くなるのを感じた。
あの時、沙都子に「家族に紹介する」と言ったのは僕だ。
その約束を守るべく、こうして沙都子を連れて家に向かっているわけで。そこには何の矛盾もないはずだ。
(だけど……)
沙都子と二人でいるのに、今僕の心を占めるのは千裕のことだった。
千裕はどうして沙都子からの電話を切ったりしたんだろう。そして、電話があったことをなぜ僕に知らせてくれなかったんだろう。
「何を考え込んでるの、柊?」
黙っている僕に、沙都子が声をかけてくる。
「もしかして緊張してる?」
「いや」
僕が首を振ると、沙都子は大きなため息を吐き出して、片手で自分の胸を押さえた。
「私は緊張してるよ。何てったって、彼氏の家にはじめてお邪魔するんだもん。すっごいドキドキしてる」
そう言って深呼吸する。
そんな沙都子を可愛いと思いながら、それでもやっぱり僕は千裕のことが気になっていた。
沙都子を連れて帰ったら、千裕はいったいどんな顔をするだろうか。