オリーブの木の下で

□オリーブの木の下でW
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 ねえ、聞こえる?
 あなたを呼ぶ声が。
 ねえ、見える?
 あたたかい小さな灯りが。

 顔を上げて。前を向いて。
 ここがあなたのお家だよ。
 もう大丈夫。二度と迷ったりしない。
 いつも、どんな時も、ここであなたのことを待っているから。
 あなたは大切な大切な家族。
 もう二度と迷わせたりしないよ。

 ――おかえりなさい。




ココ&空シリーズC
【オリーブの木の下で】
〜 ある野良猫のお話 〜





 すっかり寒くなった冬のある日。
 私は久しぶりに飼い主の莉子(りこ)と一緒にお庭に出ていた。
 「ううー。やっぱり寒いね、莉子」
 私がブルッと全身を震わせると、
 「湖子(ココ)ったら、そんなに立派な毛皮を着てるのに」
 莉子が苦笑する。
 「だって、私は猫だもん。猫は寒いのが苦手なんだもん」
 私はつんとすまして答えてみる。
 莉子はますます苦笑いしながら、私の体を両手で包んでくれた。
 「今度、ココにセーターを編んであげようか?」
 「セーター?」
 「うん。冬でもお庭に出られるように。あったかいふわふわの毛糸でセーターを編んであげる」
 莉子の言葉に、私はわくわくした。
 寒いのは苦手だけど、お日さまは大好き。特にこんなに天気の良い日は、家の中に閉じこもってないで、外で思いっきりお日さまの光を浴びたい。
 私は喉をゴロゴロ鳴らしながら、莉子の腕に額を擦りつけた。
 「ありがとう、莉子。すごく楽しみ」
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