First Love
□第三話・気持ちが見えない
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「なんだ、つまんねーな。男連れかよ」
晃一がぶうぶう文句を言う。
千裕はくすくすと笑いながら、晃一と薫を交互に眺めた。
「そう。だから私、先輩たちの暇つぶしに付き合っている暇はないんです。先輩たちもさっさと真面目にナンパでもしてください」
「真面目にナンパって――」
どうよ?と晃一が薫に目で聞く。それなので、薫もやっと笑った。
千裕はそのすぐ後に、自分のお茶代を置いてレストランを出て行った。おごるから、と言う晃一の言葉に、最後までうんと言わなかった。
レストランを出て、颯爽と道を歩いていく千裕の後ろ姿を、薫は何とはなしに目で追ってしまう。
本当に変わった子だ。つかみどころがなくて、何を考えているのかまったく分からない。晃一や薫と話していても、少しも媚びたりしない。見かけはとても女の子らしいのに、まるで男同士で話しているみたいだ。
そんな女の子を見るのは、薫にとって初めてのことだった。和樹が『変わり者』だと言っていたのは、こういうことだったんだろうか。
「何を真剣に見てんのよ、薫ちゃん?」
晃一に突っ込まれて、薫は慌てて視線を千裕から外す。その顔がほんの少しだけ赤くなる。
晃一はそんな薫を見て、ちょっとだけ複雑な顔をする。
それから、胸ポケットから煙草を取り出し、口で器用に一本だけを取り出す。
晃一が煙草を吸い出したのを見て、薫はふと妙なことに思い当たる。
「あれ。そう言えば、お前、なんでさっきは煙草吸ってなかったの?」
日頃からヘビースモーカーの晃一にしては珍しいことだった。
晃一は気持ち良さそうに煙を吐き出しながら、
「だってさ、高岡がいたじゃん。あいつ、煙草の煙ダメなんだよね」
「へえ。よくそんなこと知ってるな」
薫が感心して言う。