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□〜夏風〜
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風鈴のチリンチリンという夏らしい音。
クーラーのない部屋には、上半身裸でパンツ一丁という情けない姿で寝ている幼馴染みの男の子。
これが夏の風物詩。
〜夏風〜
「裕ちゃーん、かき氷食べよ」
お腹をボリボリ掻きながら、その目は私をとらえた。
「優子か……」
そう言うと、また目を閉じて動かなくなってしまった。
「私以外にこの暑っ苦しい部屋に来てくれる女の子が裕ちゃんにはいるんですかぁっ!?」
嫌みったらしくそう言うと、微かに裕ちゃんの眉がピクリと動く。
「食べないの?」
せっかく台所でおばちゃんと作ったかき氷を持って来たっていうのに。
「……何味?」
「イチゴとメロン」
「俺イチゴな」
即答すると、裕ちゃんはベッドからのっそりと起き上がり、私に手を差し出した。
イチゴ味が食べたかった私は渋々とそれを渡す。
「くぁーッ、冷てぇ」
裕ちゃんは、かき氷の一番赤く染まった部分を一口食べながらこめかみを押さえる。
裕ちゃんはガキのまんまだなぁ…なんて思いながら、その様子を畳に座って呆れた顔で見ている私。
開いている窓からは夏の風が入ってくる。
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