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□冬の訪れ
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冷たい夜風が
駅のホームを吹き抜ける。
「さ、寒……」
身体が自分の意思とは反対に
勝手にガタガタと震える。
冬の訪れ
ホームには私以外に人はない。
それもそのはず。
ついさっき、私の目の前で下りの電車が発車したばかり。
あと30秒早かったら、私もさっきの電車に乗っていたはず……。
暖房のきいた車内に。
肩をすくめて背中を丸めた姿勢のままベンチに座ると、ブレザーの上着ポケットに手を突っ込んだ。
そんなに温かくないけど…気休めくらいにはなる。
田舎の電車は夜にでもなると本数が少ない。
おかげで30分もこの寒い中、ホームにいるはめになった。
…マジで凍えそう。
「寒……」
指先も 爪先も 鼻先も
寒くて寒くて感覚ない。
ホームに表示されている時刻は
只今20時52分。
次の下りの電車の時間まであと26分……。
カサカサに乾燥した自分の膝小僧を眺めながら
いつの間にか今年も冬が訪れたと実感した。
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