痴漢日記〜学生編〜
□No.6吉野竜樹
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〈1日目:am〉
「んだよ、オッサン…見てんじゃねーよ」
金髪の少年にギロリと睨まれ、中年男性は、そそくさと移動していった。
平日の午前10時。
7割程の人で埋まった車内で、ソコだけぽっかりと不自然な空間が出来ている。
扉付近のその場所には、あぐらをかいて座り込んだ高校生が、携帯電話をいじっていた。
少し長めの金髪は、緩く後ろに流し、左耳にはドクロのモチーフのピアス。
三山高のブレザーを見事なまでに着崩し、ボタンを三つ外した白のシャツの下からは、真っ赤なTシャツが覗いている。
時折、周りを威嚇しながら、彼は床に陣取っていた。
「…決まりだな」
少し離れた場所から観察していた俺は、彼を次の獲物に決めた。
野良猫のような彼の、あのキツい口調が、どんな声音に変わるのか…楽しみだ。
俺は携帯を開き、強へメールを送った。
下手な噂話などではなく、確実な情報を得られるだろうと確信して………。