痴漢日記〜リーマン編〜

□No.1畑信吾
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〈1日目〉
「朝日君、これの2サイズ上はまだ在庫がありましたか?」

客足の途切れた時間帯。女性従業員からのランチの誘いに少々うんざりしていると、不意に上司から声をかけられた。
振り向くと、少しばかり低い位置から上司―畑信吾(はたけ・しんご)が片手にダークグレーのスーツを手に俺を見ていた。

「えぇと…あぁ、ありますよ。すぐに持ってきますよ」

「私も一緒に行きましょう」

これ幸いにと、俺は彼女らに断りを入れ、彼と倉庫へ向かった。

「毎日大変そうですね…いっその事誰か1人と付き合ってしまえば……と、余計なお世話ですかね」

同じような品物の中、目当てのスーツを探していると、ポツリと彼が呟く。

「まぁ、畑さんの奥さんみたいな美人なら考えますけどね」

「…っ…あ、ありがとう…」

ようやく探し当てた2サイズ上のスーツを手渡しながら返答すると、一瞬、彼の瞳が影を帯び、揺らいだ。

おや……これは。

美人の妻とこの春から有名私立中学に通う聡明な息子を持つ幸せな男の表情ではないな。

「畑さん、今晩飲みに行きましょう」

俄然、彼に興味を抱いた俺は半ば強引に彼を食事に誘ったのだった。
その夜、馴染みの居酒屋で、アルコールを口にさせると、ポロポロと彼の口からは、実に面白い話が聞けた。

美人妻がどうやら浮気をしているらしい。
そして、それを咎める事ができない自分に自己嫌悪を持っていると言うのだ。

優しさがウリの男だとは思っていたが、その優しさが仇になるなんて思ってもいなかったのだろう。

「ごめんね、愚痴を零してしまって…忘れちゃって良いですからね」

寂しげに微笑んだ彼に、俺は……

庇護欲を掻き立てられると同時に征服欲を煽られた。



決まった。

次の獲物はコイツだ。
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