メルヘン☆タイム

□人魚物語
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蒼く清らかな海の中で、一際目を惹く男体の人魚。
名前は宇海(うみ)。
首には虹色の貝で作ったネックレス…けれど、その輝きさえ霞む程、優美でしなやかな肉体。
本人は全く無自覚だったが、彼を羨望と欲望の入り混じった視線で追う者は多い。


そんな宇海が18になったその日、いつも穏やかな海の底とは違い、海上では嵐が吹き荒れ、豪奢な船が激しい高波にもまれていた。
船の持ち主は東の国の王子―光輝(こうき)。
頑強な肉体を持つ彼も、しかしながらこの荒波に打ち勝つ術はなかった。
一際高い波に傾いだ船はそのまま反転…多くの船員と共に彼もまた、海へと投げ出されたのだった。そして、意識を失う寸前、光輝は金色の瞳をその眼に映した……。



「………船だ…あぁ、転覆したんだ……」
そんな光景は初めてみる訳ではなかった。
流れゆく人間には、関わってはいけない…と、きつく言われていたから、たとえ目の前で溺れていたとしても、宇海は誰にも手を差し伸べる気はなかった。
そう…その時までは。
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