異世界の扉

□驚異の屈折率が真直ぐになった日
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七夕の日。

新さんが少しだけ、素直になった日。

押してダメなら、引いてみろって新さんには効かないと思ってたけど・・・効いたみたい(笑)

新さんは相変わらず、俺を飼い犬だって言って俺の告白にも「うるさいよ。」っていうだけ。

でも、一つだけ変わった。

いつも新さんの背中を追っかけてた俺だけど、最近は新さんが待ってくれるようになった。

隣で歩けるようになった。

嬉しい変化だ。

「新さん!」
「うるさいぞ。真行寺。静かに入ってこれないのか。」
「ごめんなさいっす。」
「で?何だ。」
「明日から、夏休みですね。」
「そうだな。」
「七夕の約束覚えてますか?」
「馬鹿なお前と一緒にするな。覚えてるに決まってるだろ。」
「ですよね。って、なら!」
「声が大きい。」

「すいません。」
「はぁ。生徒会の仕事があと少しで終わる。早く行きたかったら、邪魔するな。」
「はいっ!」
「うるさい。」
「すいません。」

七夕の日、新さんに買ってもらった肌触りのいいシャツ。

それを俺は一度も着てない。

夏休み、それを着てデートしろって新さんに言われたから。

だから、着てない。

その約束が果たされると思うと、とっても嬉しかった。

だから、新さんの所に走ってった。

まぁ、いつものようにあしらわれたけど。

でも、ちゃんと覚えてくれてた。

約束も有効だった。

新さんとデートが出来る!

「・・・ぎょうじ、真行寺。」
「う〜ん・・・。新さん?」
「よく寝ていたな。」
「あっ、すいませんっ!俺、いつのまに。」
「終わったぞ。」
「生徒会の仕事がっすか?」
「あぁ。これで、夏休みはフリーだ。」
「新さん。また、無理したんじゃ。」
「俺が二度も同じ失敗すると思うか?」
「じゃあ、ちゃんと休んでたんすね?」
「当たり前だ。きちんと、睡眠はとっていた。そのほうが、集中力も効率もよかったからな。」
「よかった。じゃあ、明日からゆっくりできるんですね。」
「あぁ。だが、真行寺は部活があるんじゃないのか?」
「夏休みは自主練してれば良いんで。時間の融通は利きます。」
「そうか。じゃあ、何時行く?」
「デートっすか?」
「約束だからな。」
「明日はどうっすか?」
「また、急だな。」
「だめっすか?」
「いや。何処行きたいんだ?」
「服はこの前選んでもらったから・・・。」
「映画でも見に行くか?」
「見たい作品でもあるんですか?」
「あぁ。」

意外だった。

新さんから、行きたい場所を行って来るなんて。

勝手に決めろってまた投げやりに言われるんだと思ってたから。

新さん。俺、自惚れちゃいますよ?

新さんも、俺とのデート楽しみにしてくれてたんだって。

でも、もっと意外だったのが新さんが観たいって言った映画だ。

「えっ。それって、同性愛を題材にした作品ですよね?」
「そうだ。それがどうした?」
「ちょっと、意外で。」
「そうか?」
「はい。それに、その作品ってハッピーエンドで有名ですよね?」
「女性でも見やすいとな。」
「はい。」
「明日は、その作品を観に行くぞ。いいな?」
「はい。俺も、観たいなぁって思ってたんで。その後は、どうします?」
「飯でも食いに行こうか。」
「はい!」
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