JEWEL
□1 再会
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『ぼくね、ラクスが大好きなんだよ』
まだ二桁にも満たない年頃の少年が、大きな瞳に涙を溜めている同じ年の少女に明るい笑顔でそう言った。
『だから、大きくなったらけっこんしようね!』
『…はいっ』
それは色褪せることのない記憶――――
朝の静かな部屋をけたたましい音が鳴り響く。
「ぅ…んぅ…」
ベッドで眠っていたラクスはその音で目覚め、たんっと目覚まし時計のボタンを軽く叩いた。
「ふぁ…。…んー、夢?」
彼女は寝付きも寝起きも良く、今日も目を擦りながらゆっくり上半身を起こした。
途中欠伸をひとつこぼす。
「懐かしい…夢…」
思い出すのは先程まで見ていた夢で、それは10年前の出来事であった。
家も隣で仲の良かった幼馴染みの少年が引っ越してしまった日の事。
「…彼は元気でしょうか」
心が暖かくなるキラキラした思い出。ラクスは少年と過ごした十年前を思いながら制服に着替えていた。