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□聖夜
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今夜はクリスマス・イヴ。街はイルミネーションで光り輝き、家族や友人、そして恋人達で溢れかえっている。その中にキラとラクスは混ざっていた。
「ちょっと…緊張しますわね」
「そう?僕は嬉しいけどな」
時折吹く冷たい風に体を寄せ合い、誰の目から見ても2人は仲の良い恋人同士。表情には幸せが滲み出ていた。そう、普段男装をしているラクスは全て取り払い本来の姿でキラの隣で歩いているのだ。
色々あったがめでたく気持ちを通わせてたキラとラクス。しかしそれを知っているのは弟のシンのみ。バレれば彼女の退学は免れないだろう。愛を深める場所と言えば、寮の2人の部屋ぐらいで外でのデートなんて今日が初めてである。暗い夜、しかも人の多いクリスマスなら何とかなるだろうと考えたのだ。
しかし実は毎年サッカー部でクリスマスパーティーをやるのが恒例行事だったのだが、何かと理由を付けて別々に逃げ出して来た。
「でも本当に大丈夫でしょうか…?」
「心配?」
「はい…」
この日を逃したらいつになるかわからないとは言え、2人一緒にいないだなんて怪しまれるのは必至だ。
「シンが任せろって胸張ってたじゃない。可愛い弟を信じてあげようよ」
「そう、ですわね」
ラクスは出掛けに送ってくれたシンを思い出す。何やら少しだけ挙動不審にも見えたが、彼はやるときはやる子だ。それは自分がよく理解している。きっと上手く誤魔化してくれてる筈だ。
まさか少し前にキラが笑顔で脅しをかけていたなんて、彼女は知らなくていい真実である。
「ね!初デート楽しもうよ」
「はいっ」
キラの満面な笑顔はラクスの心をいつもほっこりと温めてくれる。これが恋。
繋ぐ手に力を込め、クリスマスムード満開の街に繰り出した。