睦月様の作品(フェイソフィ)

□聖なる夜に想うコト
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[聖なる夜に想うコト]



『ごめんね…』

彼女は苦しそうに、申し訳なさそうにそう言った。
僕は彼女の頭を撫でて微笑んで。

「気にするなって。
それより、ちゃんと寝とけよ」












「さて、と…」

服の腕を捲って、僕は台所で仁王立ちになる。
どうしようか、と思ったがとりあえず。

「コンピュータ、ソフィアの作ってたクリスマス料理のレシピを表示してくれ」


そう。
両親も相変わらず仕事で、毎年二人でクリスマスを迎えていた僕ら。

けれど今日はソフィアが風邪を引いてしまって。
だから、代わりに僕が家事をすると決めた。


「50件該当しました」
「有難う……って50!?」

確かに毎年違う料理が出てきていたけど、まさかそんなにあるなんて。
やっぱりソフィアは凄いんだなって実感する。

「……中でも簡単そうなヤツを頼む」

溜め息混じりにそう言うと、空間に映し出される料理のレシピ。
それに目を通す。

「『ポトフ』……………なんだ、野菜を切って放り込むだけ?」

それなら出来そうだな、と安堵して。
冷蔵庫から野菜を取り出して、刻む。


「形は悪いけど…ま、食べられれば良いよな」

一人でそんな事を言いながら、鍋に野菜と水、コンソメを入れて火に掛ける。


「…時間が余ったな。
でも、ケーキも買ってあるみたいだし…サラダも惣菜もあったよな…」

最初から僕が手を出す必要も無かった様で。


いつも世話になってるって言うのに、こんな時に頼りにされてないなんて。





「……違うだろ…」

乱暴に頭を掻き毟って、自己嫌悪する。

ふと、洗濯物について思い出して。


「…よし、それだ」

意気揚揚と、風呂場に向かった。





「……うわ、何だよこれ」

脱衣所に放置されていた自分の服の数々につい、声を零した。
山積みな服に、自分で呆れ果てる。

こんなのを、いつも文句も言わずにやってくれてたんだ。
そう思うと、自然と口から出る。


「…本当、ソフィアが居ないとダメなんだな…僕は」

苦笑して、服を洗濯機に入れる。
すると。



ビー!!!!!!

「!!?」

台所から、警報機の音。
慌てて台所へ足を進ませると。


鍋から、異様なまでに液体とも気体とも言えないモノが溢れ出して。
ボコボコと音を立てながら溢れるモノに、頭の中を真っ白にして茫然とつっ立っ
て居ると。

「フェイト…どうしたの…?
…あ、お鍋吹き零れてるよっ、止めて!」
「…え、あ、あぁ!!」

ソフィアの声に弾かれて、漸く僕はガスを切る。
ほっ、と一息吐いて気付く。

「…ソフィア、起きてちゃダメじゃないか」
「だって警報機が鳴ってたから…びっくりしちゃって。
掃除しなくちゃね…」

言いながら、コンロに近付こうとするソフィアを僕は慌てて止めた。

「ダメだって、僕がやるから!
ソフィアは大人しく寝てて」
「…そう?
でも、私さっきよりは随分良くなったよ?」
「………襲うぞ」

ちら、と視線を向けてそう言うと、ソフィアは顔を真っ赤にして黙る。
それを見てコンロへ向かおうとして。

背中に柔らかいものの感触が伝わった。


「…ソフィア」

服の胸辺りを弱々しく掴んで。
僕から離れないように、抱き付いて。

呟く。

「フェイトの…声がね?
……心地好くって…安心できて…好き、なの…」
「…それは『僕が必要』、って事?」

背中越しに、ソフィアは頷く。
思わず、顔が緩んだ。

ソフィアの手を優しく外して。
向き直って、ひょい、と彼女の体を抱き抱え。

「ひゃ!?
フェ、フェイト…///」
「強制連行。
ソファでも良いから、横にならないと、な?」
「わわ、分かったから、下ろしてよっ」
「何言ってるんだよ、そんなにふらふらしてさ」

真っ赤になって声を荒げるソフィアに構わずに、ソファに下ろして。
額に口付けると、ソフィアの瞳が見開く。

「!!???」

更に顔を赤くする彼女の髪を撫でて。



「僕も、ソフィアが居ないとダメだから。
…早く良くなる様に、傍に居るから」


折角のクリスマスだったけど。

改めて、君が大切なんだって分かったから。



明日は治して。

今度は僕の傍に居て。

Fin
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