Four Heroes

□Wine collection
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大男「おうおう。どうゆうことでい」
 2メートルを越える半裸の男が見るからに機嫌悪く歩いている。
 まとうのは腰布だけ、筋肉で膨れた上半身を守るものはない。
 銀色のオールバックで、背負うはその身長と同じく長くごつい片刃。
 それが怒りながら歩いているのだ、皆が家へと隠れる。
大男「何で酒場が一つもないんだよ。
 おっ。ここ、でかい家」
「誰の家だ?」
大男「知らん」
 大男はずかずかと入っていった。
 表の看板にはフローレン村・村長、とあった。

村長「ご用件はなんでしょうか?」
 初老の口ひげがある男、村長が対応に当った。
 向かい合って座る。大男の椅子は悲鳴をあげた。
大男「ここはフローレン村だよな?」
村長「そうですが」
大男「俺はここの酒が美味いと聴いてやってきた」
村長「それは、ありがとうございます。
 私達が精魂込めたワインですからね」
大男「だが、だ」
 大男は前傾姿勢になった。村長はのけぞる。
大男「酒場が一つもない、ってのはどういうことでぃ。
 俺はな、それだけを楽しみにここまで来たんだぞ」
村長「それは、すみません」
 老人が軽く頭を下げる。
村長「しかし、ここは卸しているだけで、貯蔵するほど、直接売れるほど作れないのです。
 それに村に来るのは卸しの商人だけなので、宿屋さえあればいいという状態ですので」
大男「そう、なのか?」
「あほめ」
大男「ふんっ」
 村長は辺りを見た。同じ部屋にいるのはこの大男だけなのに、今の声は誰だろう。
大男「おう、邪魔したな」
村長「あ、待ってください。冒険者さんっ!!」
 老人の呼びに大男は止まった。
村長「お酒を、用意できますよ」

大男「で、俺は何処に向かってるんだ?アジュガ?」
 大男は馬車を走らせながら尋ねた。
 ホロのない荷台には誰もいない。
 いや、
「聞いてなかったのか」
大男「いや、聞いてたさ」
 大男の、荷台にかかっていた影が立ち上がった。
「オーク(豚顔のヒューマノイド)の根城に奪われたワイン樽を取りに行っている」
 影は立体の肉体を得、姿は大男のとは違う形になった。大男の影は残ったままだ。
 彼がアジュガである。先ほど村長の時にもいた第三者だ。
 短い髪を立て、細い身体は黒いマントを着ている。腰に大きな袋を持つ。全身、影の黒。
大男「それが美味いのか?」
アジュガ(以下ア)「それでも構わないが、依頼はその酒を今日中に村に届けることだ」
大男「なんでだ?」
ア「その樽には新作が入っていて、それを明日、バイゼルの人が取りに来る。
 その礼で酒を準備してくれるとのことだが」
大男「バイゼル?ああ、あの焼肉が美味かった街な」
 大男が手綱を引く。2頭の馬が駆ける。
大男「で、俺らは何処に向かってるんだ?」
 その言葉にアジュガは再び影に戻る事にした。
大男「お〜い、アジュガ〜」

大男「ここだな」
 到着場所は山から石壁が突出した形になったおかしな場所であった。
ア「ダイダイっ」
大男「あんだよ」
 影、アジュガが大男、ダイダイに声をかける。
ア「断っておくが、俺はお前を殺すために、付いて歩いてるんだからな。
 最後の最後は、助けんぞ」
ダイダイ(以下ダ)「ああ、知ってら」
 ダイダイは笑んで歩を進めた。アジュガはいつも言うのだ。
 厄除けの言葉だ。

ダ「で、どうやって入るんだろうな」
 扉らしきものは発見したがそこに取っ手はない。
 石壁に囲まれ、壁と同質で壁より一枚奥にある扉。
 押すも引くも横に動かすも難しそうだ。
 よく見ようとダイダイが扉に近づく。
ア「ダイダイ!」
 上ばかり見ていたダイダイにアジュガが警告する。
 床が、一枚だけ赤いタイルがあり、それにダイダイが足を向けているのだ。
ダ「あん?」
 振り返るダイダイはちょうど、赤タイルの上に足を置いた。
 と、同時に扉が横に開いた。
ダ「おおっ。おい、開いたぞ」
 歓び赤いタイルから離れ扉に足を向ける。
 再び扉が一気にしまった。後ろを見ながら歩いたダイダイは見事に鼻先をぶつけた。
ダ「いてっ。
 なんだよ、さっきは開いてたのに。トラップか?」
 両腕を扉に当てる。腕の筋が膨れた。
 ドンっ。バタン。
 石扉は向こうに外れ落ちた。
ダ「これで開いたな」
 赤タイルの上に何かを置けばよかっただろうに、そう影の中でアジュガは思った。

 入ってすぐは廊下みたいな感じだ。上から明かりが照らす。
 左手に二つの扉、奥にも扉らしきものがある。
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