Four Heroes
□Myth of contract and liberating
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ここはカランコエ国、首都ミラベラ。国としての規模は小さいが商業としてかなりの発展を遂げた国である。
そのゴールの酒場に二人の男がテーブルについていた。
一人の男は眼鏡越しに静かに本を読みふける。ただ、彼の髪は額のところで2本の触角のように立ち上がって下へ流れる長い黒髪。
もう一人は紫髪、緋色フードを肩にテーブルに突っ伏すようにしていた。
二人とも旅人の装いではあるが身体がか細く、装備からも戦士でないことは確かだ。
「近く戦争が始まるかもしれない」「相手は何処だ?」「知るか」
「皇子がさらわれたと聞く」「お姫様がさらわれたらしい」「えっ、国王じゃねえの?」
酒場の喧騒、噂話はこの二人にはどこ吹く風の静けさだった。
紫「うそつき」
店に入って二時間。紫髪の男が注文以外でやっと口を開いた。
黒「何がです?」
黒髪は本から目線を上げもせず問い返す。
紫「ソリダスター、お前。この国は美人が多いって言ったろ?」
ソリダスター(以下ソ)「はい、いいましたが?」
紫「どこがだよ!!」
紫髪は勢いよく立ち上がった。酒場が一気に静まり返る。
紫「この国に入って目に付くのは男・男・男!この店だって看板娘一人いない!!
なんなんだよ、この国は野郎しかいない!!ホモの国か!!!!」
ソ「説明が足りなかったようですね、ヒエン。
この国では女性は日光を浴びるのをヨシとしないのですよ。日中に女性と会うのは難しいですよ」
ヒエン(以下ヒ)「先、言えよ」
ソ「それより、」
やっと黒髪、ソリダスターは本を閉じ目線を上げた。
ソ「この状況、どうするんです?」
紫髪、ヒエンが辺りを見渡すと血気盛んな、戦士風の男達に囲まれていた。
ヒ「おや?」
ヒエンは今気がついたように席についた。
男「おいっ」
囲む男の一人、一番体格のよい男が口を開いた。
男「俺らの国がなんだって、こら」
ヒエンは肩を落としてため息をついた。そして、
ヒ「ダイダイ」
仲間の名を呼ぶ、が
ソ「彼は今は一緒じゃありませんよ」
ソリダスターが返事をし、自身はページをめくる。
ヒ「……使えない奴」
二人が囲む木のテーブルが壊れた。
男「無視すんじゃねえよ」
先の男がブロードソード(真直ぐな剣)を突き刺したのだ。
ヒ「うるせえな」
ヒエンが小さく言う。男がそちらを向く。
男「あん?俺を『豪腕の……』」
ヒ「うるさいって、言ってるんだよ!!」
ヒエンは右手の中指につける、蛇型の指輪を掲げた。
ヒ「ぜぇっ。やりすぎたかな?」
店から200m離れた路地にヒエンは身を潜めていた。
全力疾走で息が上がっている。
ソ「まったくです」
その対面にソリダスターがいまだ本を読みふけっていた。
ヒエンよりは体力があるので息はきれてない。
ソ「女がいないからって店を半壊させるなんて」
彼らがいた、先の店『青鯨亭』は酒場である一階が見晴らしよく、半壊状態である。
ヒエン一人で破壊した。
ヒ「でも、看板娘のいない酒場なんて存在意味ない気がしない?」
ソ「知りません。それより、これからどうする……」
男「いたぞ!!!」
表通りから声が響く。この国の憲兵であった。
ヒ「やっべ」
二人が逆方向に走ろうとするとすでに憲兵が待ち構えていた。