Four Heroes

□Cliff of St. Galdobelc
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 ここは冒険者の宿 "黄金の長靴" 屋。
 もうすでに日は沈み、晩餐の時間である。
 そこに身体の大きな半裸の男と青い僧衣に身を包んだ男が 1つのテーブルを囲っている。
 半裸の男は銀髪をオールバックにし、背に巨大な剣を背負う、バーバリアンのダイダイ。
 胸に『海王教』のシンボルを下げる、僧侶・ソリダスター。
 ダイダイはエールを水のように飲み進め、ソリダスターは赤ワインを頼んだものの手を付けず、手に持つ本にのめりこんでいる。
 と、そこへ二人連れの人間の旅人が姿を現した。
 片方は丈夫なスーツ・アーマーに身を固めた戦士風の男、もう一人はリュートを手にした吟遊詩人の女だ。
 二人はそのままカウンターまで進み、男が店主に声をかける。
戦士「すまないが、伝説の土地・聖ガルドベルクの崖を知らないか?」
店主「あん?」
 ダイダイへの新たなエールを注いでいた店主はそちらを向く。
店主「聖ガルドベルク?」
ソリダスター(以下ソ)「古代太陽教の高司祭の名前ですね」
 店主ではなく、ソリダスターが本から顔を上げて答える。
 戦士は顔をこちらに向けた。
戦士「知っているのか?」
ソ「ここらへんでは少しは、有名ですからね。
 確か、ラスマーンと言う村の近くだったと記憶しています」
戦士「ラスマーン。そうか、その村にあるのだな。
 助かった、ありがとう。
 酒代にでもしてくれ」
 戦士はソリダスターのテーブルに 3Gを置くと店を出て行った。
 吟遊詩人の女はためらいがちにソリダスターを見ていたが、戦士が出て行くと慌てて後を追っていった。
ダイダイ(以下ダ)「なんでい、古代太陽教って」
 話が分からなかったダイダイがソリダスターに尋ねる。
ソ「昔に滅びた、今とは少し違う信仰ですね」
店主「それで、聖ガルドベルクの崖ってなんかあんのかい?」
 店主もエールを運びながらソリダスターに尋ねた。
ソ「細々と伝えられている伝承ですよ。
『古代王国時代の大魔術師にして、太陽神の高司祭である聖ガルドベルクは、あまたの罪人に光の法を教え、新しき道を歩むことを進めた。
 その新しき道とは、死への道である。
 死への道にはふたつあり。
 ひとつは、無へと帰する暗黒の道。
 もうひとつは、再生へとつながる光の道である」
女「太陽神の法によれば、罪人は暗黒の道を通り無に帰り、正しき太陽神の使徒は、光の道を歩んでふたたびこの世に生を受けるとされている」
 ソリダスターの言葉を続けたのはつい先ほど出て行った女吟遊詩人である。
 彼女はこちらを向く三人に会釈をし、さらに続ける。
女「しかし、罪人にも唯一、光の道へと歩む方法が残されている。
 それが後に聖ガルドベルクの崖と呼ばれたヤスガルン山脈に存在する太陽神の聖地である。
 この崖から身を投げたものは、たとえ罪人であれその罪を償われ、光の道を歩む事ができる』」
 吟遊詩人は言葉を切った。伝承が終わったのだろう。
ソ「さすが吟遊詩人さん」
 ソリダスターは軽く拍手をした。
ダ「……つまり、どういう意味だ?」
 内容が理解できなかったダイダイは周りに尋ねる。
店主「つまり、自殺の勧めだろ? いやだね、そんなの」
 店主は金にならないと、自分の仕事へと戻っていった。
 吟遊詩人は、残る二人のテーブルの側に立ったままだ。
ダ「え〜と、座るか?」
 ダイダイが席を勧めると女吟遊詩人は礼を言って席に着いた。
ダ「でもよ、なんで太陽神はそんなことを推めるんだ?」
ソ「太陽神の方針は『闇強ければ陽、さらに強く』。
 どのような悪事もそれに勝る善行を行えば救うと諭す宗教ですから。
 いかなる罪も死よりは軽いということです」
 ダイダイの質問にソリダスターが答える。
女「博識、なんですね」
 吟遊詩人は笑顔を向けた。
ダ「だろ? こいつ、海王教の司祭のクセに、こんな事まで詳しいなんてよ」
 ダイダイはソリダスターのシンボルを吟遊詩人に見せるために、引っ張った。
 首にかけてある鎖がソリダスターを前に引っ張った。
ソ「うぇ。ダイダイ、私は司教です。
 ところで、何の御用ですか?」
女「あっ」
 ソリダスターに言われて戻ってきた理由を思い出した。
女「ニーロットを、彼を助けてあげてください」

女(以下イ)「私はイーファンといいます。見てのとおりの、吟遊詩人です」
ダ「俺はダイダイ。戦士だ」
 ソリダスターは何も答えない。
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