Four Heroes

□Black dream end
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声「お〜い、あんた」
 冒険宿場で一人、本を読む男に声がかける。
 それは青い僧衣をまとった僧侶。種族は人間、それも細身だ。
 黒い長髪を垂らし、さらに前髪は虫の触角のように二つに分け立たせ垂らしている。
男「はい?」
 彼は笑顔で顔を上げた。
 相手はここの店主のドワーフであった。
店主「あんた、この間の事件、解決したんだってなっ」
男「まあ、そうですね。お陰で大騒ぎになったようですが」
店主「ああ、なったさ。
 あの男が捕まったらそりゃ、」
男「それで、用件はなんでしょう?」
店主「お、おう。
 実はよ、その一件から、「謎のモンスターもここに頼めば一件落着」って噂が立っちまって。
 それで、結構繁盛してるんだわ」
 確かに前回来たときよりも、にぎわっている。
男「そのようですね、おめでとうございます」
店主「ありがとう。いや、そうじゃなくてよ。
 大体の事件は、単なる勘違いのようなんだけどな、通常モンスターとか、見間違いとか。
 でも、どうしても、分からねえ事件が持ち込まれるわけだ」
男「はあ、私にはあなたが何を言いたいのかが分かりませんが」
店主「そこでだ、仕事、引き受けてくれねえか?」
 店主は依頼書を僧侶に突きつけた。
 僧侶はそれを一読し、さらに自分の影に目を移した。
男「…分かりました。
 前回一緒にいたものは別の件で動いておりますが、私は引き受けますね」
店主「そうかい!助かるぜ!!」
男「そうそう、」
 僧侶は自分の手荷物を持ち上げて店主に笑顔で言う。
男(以下ソ)「私には、ソリダスターという名がありますので、今度は覚えてくださいね」
店主「おい、依頼書」
ソ「結構。もう憶えましたから」
 ソリダスターは目的地へと足を向けた。

 ソリダスターは乗合馬車に乗り、北へ向かう。
ソ「ビルシュ村の商人からの依頼。
 深夜に屋敷を襲う亡霊を退治してほしいとの事です」
 彼は本を読みながら依頼内容を言う。
 しかし、現在この馬車に乗っているのは一般人。
 冒険者や商人の姿がない。いや、彼の知り合いも一切いない。
 独り言のように呟くと、ソリダスターはそれっきり、本に没頭した。

 着いたビルシュ村は山の麓のなだらかな傾斜地に広がり、農耕と牧畜で持っている小さな村だった。
 とうもろこしのように背の高い穀物や麦畑が広がり、ところどころ柵に覆われた草原に牛や山羊がのんびりしている。
ソ「さて、」
 乗合馬車を降りると、ソリダスターは目線を上げ、
ソ「すみませんが」
 ちょうど通りかかった村人に声をかけた。
 そのクワを担いだ老人は物珍しそうに、ソリダスターの姿を上から下までみた。
 彼の姿は薄手の僧衣に大きな肩掛けを持つ一般的な冒険僧侶の姿。
ソ「ラギルさんの館はどちらでしょう?」
村人「ラギル?あんた、あのお屋敷に用かい?」
 老人は驚いたように目を見開く。
ソ「ええ。その方に依頼を受けたものですから」
村人「あそこに出る幽霊は、いや、なんでもないさ。
 お屋敷はあっちだ。道なりに進めばつけるよ」
 そう道を示すとそそくさと立ち去ろうとする。
ソ「一度語りかけたことは、最後まで話すべきだと思いますが?」
 ソリダスターは、呼び止めた。
村人「…なら、ラギルさんに聞けばええ」
 足を止めずに老人は立ち去った。
 ソリダスターは仕方なく、そのまま示された方へと足を向ける。
ソ「礼を、言い損ねましたね」
 彼は微笑んだ。
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