Four Heroes

□Statue of change
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 火の精霊が強く、熱い国・ゴデチア。その首都は海に面した傾斜地にあり、漁業が盛んな都市である。
 首都といってもそれほど文明が進歩しているわけではなく、村がそのまま大きくなった印象を受け、大きな建物は少ない。
 首都にある冒険宿『潮風亭』は今日も繁盛している。

「いや〜、いいねえ」
 中から外を見ながらニカニカ笑う一人の細身の男。
 髪は紫で短髪。緋色のローブをまとい、ずっと外を見ている。
「そうか?」
 同じテーブルから同じく外を見るのは銀髪の大男。
 その手にはエールのジョッキが握られている。
「馬鹿。この空間を見て、何も感じないのか?
 灼熱の国、ゴデチア。その暑さで皆薄着。
 お、今の娘、Fはあるぞ!!」
 紫髪の男が興奮して話すのは店の前を歩く女性たち。
 この国の人々はその暑さから、また海が近いことから薄着を好み、水着姿で街を歩く。
 大男もしばらくそれを見たが、
「俺は、酒の方がいい」
 エールを一気にあおり、言葉を続ける。
「そう言うお前は厚着だな」
 紫髪の男の姿は長袖、長ズボン、さらにはフード付きの緋色のローブだ。
 彼はほんの少し、自分の姿を確認した。
「うるさい。俺は日に当りすぎたら死んじまうんだよ。
 確かに、お前の姿はここになじんではいるけどな」
 対して大男の方は皮ズボン、だけである。背中に大きな鉄の塊、大剣を背負っている。
 その半裸の姿は綺麗に焼け、膨らんだ筋肉をさらにたくましく見せる。
「お、あの娘、いいんじゃないか?」
 紫髪が通りを指差す。
 大男には誰を指したか分からなかった。
「よし、行こう」
 紫髪は脇に置いておいた梟をかたどった杖と荷物を持ち上げた。
「ナンパ?」
「ダイダイも、来るか?」
 銀髪の大男の名はダイダイ。紫髪の男の名はヒエン。
「いや、まだ呑みたい」
「『花より団子』かよ。情緒がないな。
 親父、会計」
 店主に近づいていく。
 ヒエンが頼んだのはエール一杯とつまみ。それほどの額ではない。
 しかし、そこで告げられたのは予想の2倍近い値段であった!!
「ちょ、ちょっと待てよ、親父!!
 ここは冒険宿だろ?サービスもなくてその値段かよ!」
 ヒエンは大慌てで値札を見る。
 確かにそこには告げられた値段が書かれていた。(紙を上から張られている。)
 このような冒険宿の品・値段は何処も同じようなものだったので、彼らはそれを確認することなく、注文したのだ。
 ダイダイも寄って来た。
「うわ、高い」
 ダイダイもその値段に驚いた。
 そして冷や汗。彼は延々とエールを飲んでいたのだ。二倍の値段と知らず。
「た、たりるか?」
「悪いな、あんたがた。
 この都市の価格は、今は何処もこんなものさ」
 店の親父は二人に軽く頭を下げた。
 そういえば先ほどから、会計のたびに一騒ぎがあったのはこの値段のためだろう。
「うを〜、やばい」
「なんか、あったの?」
 自分の財布の中身を確認しだすダイダイを無視して、ヒエンは店主に尋ねた。
「10日ほど前ぐらいから、街道沿いに猿の群が現れるようになってな」
「さ〜る〜?」
 ヒエンが胡散臭そうな顔をする。
「それが商隊を襲って酒を奪うようになっちまった。
 まあ、量はそれほどじゃないんだがな。
 被害の数が増えて、今じゃ商人が兵や船を雇った金の負担分が増えちまった」
 ヒエンが金を払うとおつりを返した。
「まったく、このままじゃあ、食料まで値上がりしかねない」
「足りない〜!!」
 ダイダイが財布をひっくり返して叫んだ。
「ヒエン、お金貸して」
「やだっ」
「貸してくれよ〜」
 大男が涙目で細身の男に取りすがる。細身の男は邪険に振り払おうとすう。
 それを見て、店主はクスリと笑った。
「そうだ、この件に関して、依頼があったんだ」
 店主の声にダイダイとヒエンが顔を向ける。
「どうだい、でっかいの。その報酬で払うってのは。
 それまでツケといてやっていいぜ?」
「おお、そうする!!」
「いいのか、親父?ツケなんかやって。
 逃げられるかもしれないぜ」
「換わりに、それまでの宿をうちにしてもらう。
 逃げ出したら、軍に報告するだけさ」
 店主は軽く笑った。
「逃げねえよ、任せろ」
 ダイダイは自らの分厚い胸板を叩いた。
「それで、具体的には?」
「ああ、明日の朝、北の街門でペレインて商人に声をかけてくれ。
 依頼人は彼だ」
「あっ!!!」
 突然、ヒエンが大声をあげた。
「ナンパするの、すっかり忘れてた!!」
 大急ぎで店を飛び出す。
「ナンパぁ?」
 店主はあきれた。
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