Four Heroes

□Clear palace of rainbow*1
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「あ〜、もう!!」
 大きな男が盛り上がった筋肉で土壁、いや崖を殴った。
 革ズボンだけの半裸。背中には身体に負けない、大きな武器。
「やめとけ。
 崖が崩れる」
 隣に座る優男も不機嫌のまま、言葉を返す。
 緋色のローブをまとい、紫色のウェーブ気味の髪。整った顔は二枚目だ。
 彼の言うことは過剰ではなく、実際殴った形に大きく窪みができている。
「どうするんだよ!?」
 大男は銀髪を振り乱しながら、振り返った。
「……依頼主に報告しよう」
 紫の髪をかきあげながら、優男は答える。
「世界が崩壊する、その前に」


「えっと、ここですね」
 少し大きな屋敷の前に、一人の男が立った。
 青色のローブに首からさげる水を模したペンダント。
 海王教の僧侶、旅姿である。
 黒い前髪を一度立て、それから左右に流すという変わった髪形をした男は、ノックをした。
「すみませんが、ダーヴィスさんのお宅でしょうか?
 ソリダスターが参りました」
 笑顔で来訪を告げる。

「わざわざ、すみませんね」
 ソリダスターは居間へ通され、そこで家主・ダーヴィスが右手を差し出した。
 大柄で装飾の目立つ服をまとった中年の男性である。
 落ち着いているようでもあるが、どこか輝くものを秘めた目をしていた。
「いえいえ、かまいません」
 ソリダスターは右手を取り、握手をかわす。
 それから、部屋にいる二人の男に声をかけた。
「お久しぶりです。
 ヒエンさん、ダイダイさん」
「よう」
 さきの紫髪の優男が手を上げ返す。ヒエン。
「遅いんだよ」
 銀髪の大男はソリダスターに一気に迫った。ダイダイ。
「本当に、知り合いだったのだね」
 ソリダスターに席を勧めながら、ダーヴィスが言う。
「ええ。私の知りうる、最上の冒険者達です」
 ソリダスターは会釈を返して、席に座る。
 向かいにダーヴィスが座り、挟まれる位置にヒエンがいた。
 そのヒエンの隣に、ダイダイが座る。
「でもよ、なんで、ソリダスターが来るんだ?
 僧侶のチカラがいるのか?」
 ダイダイは分からないと首をかしげる。
「ソリダスターの、別の顔が必要なんだよ。
 これから先」
 ヒエンがあきれたように返す。
「顔?」
 素直に太い指でソリダスターのアゴを掴む。
「オール・オブ・リーダー、『総てを読むもの』、ソリダスターさんだよ」
 ダーヴィスが少し笑いながら、彼の二つ名を上げる。

 魔法ギルドには、『語り部』という制度がある。
 魔法使いでなくても、それ以上の知識を持つものであれば認定され、それなりの権限を認められる。
 そして、それぞれの魔法ギルドから二つ名をあたえらるのだが、
 世界の中心と呼ばれる国、グロリオーサ。
 その国の魔法ギルドとなれば、その選考はありえないレベルである。
 だからこその、『総てを』である。

「まあ、いいや。ソリダスター。
 いつもどおり、よろしく頼むぜ」
 ダイダイがアゴから頭に手を移し、さらに大きく振るった。
 いまいち、重要性は理解していない。
「……こちらこそ」
 それでも、ソリダスターは笑顔を返す。
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