Four Heroes

□ Clear palace of rainbow*2
1ページ/62ページ

 晴天の大海原を一つの商船が進む。
 その甲板、日陰に寝転がっている紫色の髪の男。
 横で縁に寄りかかり本を読んでいる黒い長髪の男。

「で、僕たちはどこに向かってるのかな?」

 紫髪、ヒエンは目を閉じたまま隣の男に尋ねる。

「マフォロ島です」

 黒髪、ソリダスターも本から目線を上げずに答える。
 日の当る甲板では身体の大きな男たちがモップをかけ、掃除している。

「マフォロ島?
 ああ、諸島の一つね」

 ヒエンも知ってはいる。

「ええ、ここから南東にある島です。
 東を草原、西を森となっていて、緑の島とも呼ばれてますね。
 草原にはケンタウロス(半人半馬)とハーフリング(小人)が主に住んでいます。
 珍しい野草が取れるということで、」

「で、なんで僕が行かなきゃいけないわけ?
 珍しい野草を取りに?」

「違いますよ。
 あれ?聞いてませんでした?」

 やっと顔を上げたソリダスター。
 それに億劫にうなずくヒエン。

「いや、聞いた気は、するけど、項目が多すぎだよ」

「そうですか?
 『長男が冒険に旅立った舟が行方不明』で、
 『最期に向かったのは南東の方角』。
 そして、南東の方角にある『マフォロ島にて、ケンタウロスにかくまわれた青年がいる』という情報を」

 ヒエンは口をへの字に曲げ、しばし遠くを見つめる。

「あ〜、そんな話だった、気がする」

「あなたが、隣に女性と一緒にいたときに」

「憶えてるわけ、ないだろ。
 そんな大事なときに」

「それは、失礼しました」

 ソリダスターは笑顔を返す。

「しかし、豪勢だね」

 ヒエンは頭を上げ、座る。

「小型とはいえ、商船を貸してくれるんだから」

 清掃を終えた船乗りが軽く会釈をして、船内に戻る。

「そうですね、ダーヴィスさんには感謝しなくては」

 ダーヴィス氏に商船を借りることができた。
 むろん、荷運びの仕事をするが、それは二次的仕事らしい。

 「土産話を期待しているよ」

 それが条件である。

「で、ダイダイは、あの村に向かったんだよな」

「ええ。ボーレ村に」

 二人の仲間である巨体の戦士は海賊に襲われた守護者の村に戻っている。

「しかし、そうなると、戦力的に大きく不安だよ、僕は」

「そうですか?
 ……僧侶と、魔法使い。確かに前線向きではありませんね」

 軽く笑うソリダスター。

「そこに僕のカウントが入っている時点でおかしい」

「え?戦うの私ひとりですか?」

 ソリダスターが見つめるヒエンは、船べりから海を水平線を覗いていおり、その後頭部しか見れない。

「ウンディーネがいるだろ」

「まあ、そうですけど」

 ソリダスターの首の鎖が少し動く。

「何より」

 ヒエンの頭が深くうなだれた。

「僕は船に弱いんだ」

「それは、それは」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ