薔薇物語
□君の。
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君の温もりがほんのり残るソファ。
珍しく、暇を連れてやってきた君は。
会話のネタを持ってきたわけでもなく。
ただここに沈んで、隣りに座ったわたしの頭を、撫で回していた。
「俺は愛玩動物か…」とぼやいたら、静かに笑みを浮かべただけで。
仕方なく、彼の気のすむまで撫でられていた。
何か思い悩むことでもあったのだろうか。
自分ではその不安を拭うことはできないのだろうか。
最後までわたしを愛でた君は、漆黒に吸い込まれるように夜の闇に消えていった。
君の闇を見せて。
君の深淵に迷わせて。
君の、
君に触れさせて。
君の温もりがほんのり残るソファ。
そこに在る幻に、わたしはそっとキスをした――――――――――――――――
終。