薔薇物語

□鈍感にくちづけを。
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今は火村の下宿先。



本人は先程、つい忘れていたらしい、書類のコピーに走っていった。

コーヒーでも飲んで待ってろ、と言われたので、しっかりカップ片手に寛いでいる。
湯気のたつコーヒーを一口含んで、ホッと息を吐く。



久方振りに来たので、何か変わっているところはないか、とキョロキョロ。

グルッと視線を巡らせていたところに、婆ちゃんが差入れ持って顔を覗かせた。



「あら先生は?」

小首を傾げた婆ちゃんに、小用だよ、と伝えておく。

ニコリと微笑んで、そうですか、と婆ちゃん。

「有栖川さん久々にいらしたから、ついつい差入れ持ってきてみたの、二人で召し上がってね」



出来立てのカスタードパイがいい匂いで、お腹がなってしまった。


 
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