薔薇物語
□留守電。
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ひとりが寂しい夜は、火村の声が聞きたくて、聞きたくて。
幾度となく寝返りをうつけれど、込み上げてくる欲求には逆らえない。
わたしはベッドから抜け出すと、その目的のまま進んだ。
受話器をそっと取り、暗記済みの番号をプッシュしてみる。
ひとつ、ひとつ、指先に想いを込めて押された番号は、火村の携帯。
『火村の声が聞きたい』
そればかりを考えて、呼出音を遠くで聞いていた。
十回はコールがなっただろう。
そろそろ留守電に繋がりそうだ。
だが出る気配が一向にしてこない。
またドライブモードか何かにして、コールに気付いていないのだろうか?
こんなにも呼んでいるというのに……
不満と、不安で、顔が歪んだ。
諦めモードの入ったわたしに、電話は無情にも留守電へと繋がる。