薔薇物語

□留守電。
1ページ/3ページ




ひとりが寂しい夜は、火村の声が聞きたくて、聞きたくて。

幾度となく寝返りをうつけれど、込み上げてくる欲求には逆らえない。



わたしはベッドから抜け出すと、その目的のまま進んだ。
受話器をそっと取り、暗記済みの番号をプッシュしてみる。


ひとつ、ひとつ、指先に想いを込めて押された番号は、火村の携帯。


『火村の声が聞きたい』
そればかりを考えて、呼出音を遠くで聞いていた。





十回はコールがなっただろう。
そろそろ留守電に繋がりそうだ。

だが出る気配が一向にしてこない。
またドライブモードか何かにして、コールに気付いていないのだろうか?

こんなにも呼んでいるというのに……



不満と、不安で、顔が歪んだ。 



諦めモードの入ったわたしに、電話は無情にも留守電へと繋がる。

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ