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□夜に笑う
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待ってもう少し
いい夢を見ているの。

でも夢と現実、どちらがいいかしらね?




「松本、おい松本」

「…」

「俺はそこまで甘くもやさしくもねぇぞ」

「ちぇ」




眩しい光に瞳孔が悲鳴。
それを見下ろす彼はいつもと同じ顔をしている。

その眉間の皺、やめたらいいのに。


確か夢でもそうだったわよ。



「いつまで昼寝してるつもりだ」

「さぁ?隊長が起こすまで、とか。怖い夢を見たら、とか」

「なんだそれ」



直射日光を遮ったのは雲ではなくて、掌。
小さいのか大きいのか。
ありがとう、随分目にやさしいわ。

碧の宝石きらりと一度光って細まった。


眠たいんじゃない。




「…隊長今日は仕事しろーって言わないんですか?」

「別に、言って飛び出して行ったら馬鹿らしいだけだ」

「あたし飛び出したりしてませんよ」

「してる」




頬杖をついて目を閉じて崖っぷち。世界はやわらかく歪み始める。




「隊長」

「…なんだ」

「此処空けますから寝て下さい。あたし逃げたりしませんから」

「…」

「げ!なにこの紙の山!」

「じゃ、おやすみ」




窓を閉めて強すぎるお日様はお断り。できることならしばらく夢の底から戻ってこないで。

しっかりやるから、安心して。






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