□イノセント
1ページ/5ページ


ある町では独裁者が統治し、民は毎日怯えて暮らしていた

役人達は権力を盾に横暴な振る舞い
少しでも気に入らなければ理由をでっち上げ無実の罪で投獄された

薄暗い牢屋の隅で一人、膝を抱える少女もまた無実の罪によって捕らえられた一人だった

高い位置にある小さな鉄格子付きの明かり取りからは沈みかけの太陽の光と生温い風が入り込む

周りの牢は空いていて、このフロアには少女しかいなかった

完璧に日が落ち、薄暗い牢屋に裸電球の微かな人工的な光が満ちる

遠くで扉の開閉音が聞こえ、靴音が石壁に反射して反響する

「やぁ、ラクス…夕飯の時間だよ」

「……」

自分の安っぽい生地の服とは比べ物に成らない高価な生地で仕立てられた軍服を着込み楽しそうな笑みを浮かべて鉄格子の前に立つ男を見上げる

ガチャガチャと金属音がして鍵が開けられ、牢内に男が入ってくる

彼は看守のキラ・ヤマトで、ラクスを気に入り
収容されてから自分だけが構えるようにとラクスはフロアに一人ぼっちにされ、キラ以外と顔を合わせる事はなかった

きちんとした温かい食事や、キラの監視付きとはいえ温かいお風呂
更には、比較的柔らかなベッドと今収容されている囚人の中では破格の待遇だった

強制労働も無く、日がな一日ぼんやりと小さな格子窓から空を眺める毎日

しかし、当然、そんな良い事ばかりではない…

キラのお気に入りの玩具として命令に従う
それがラクスの一番の仕事ですらあった

足首に繋がれた鎖を鳴らして歩きベッドに腰掛ければテーブルに夕飯が置かれ、キラの手で一つずつ食べる

昔食器を使って脱走した囚人がいたとかで食器に触る事は許してもらえていない

きっと他の囚人はちゃんと自分で食べてるんだろうな、と思いながら食事を進める

大人しく従っていれば、この後の行為で酷い事はされないと解っているから反抗するつもりもない


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ