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□二人のマリア
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厳かな佇まいで街の中心に位置する大聖堂
住人の信仰の対象であり、心の拠り所だった
毎日鐘の音が街に時間を知らせる
そこには二人のマリアが住んでいた
神父やシスターは他にも居たが、皆その二人のシスターを崇めていた
一人は桜色の髪を持ちキリストを産み落とした聖母マリアのような優しげな少女
もう一人は紅の髪を持ち、キリストに寄り添って旅をしたマグダラのマリアのような元気な少女
人々はマリア様が二人も来てくださった…と彼女達の姿を見て誰もが手を合わせた
桜色の少女はラクス、紅の少女はルナマリアと言う名前だった
二人とも孤児だった所を教会付属の孤児院に引き取られそのままシスターになった
その日も二人はいつものように大聖堂の掃除を終え、灯りの蝋燭を交換していた
その時、勢いよく扉が開かれ何事かと振り返る
そこには二つの人影
けれど蝋燭の灯りは弱くて顔が良く確認出来ない
背格好から男性だろうと判断しつつ、懺悔室か礼拝かな、と思い声をかける
「今晩わ、本日はどういったご用件でしょうか?」
ニッコリと優しい笑みを浮かべて問いかければ二つの人影は互いに顔を見合わせ頷く
そしてあっという間に距離が無くなっていた
ポカン、としていると人影は口元を布で覆った茶髪の男性だと気付く
ルナマリアの方にも黒髪の男性が距離を積めていて
もしや、強盗?と緊張が走る
そのまま流れるような動作で腰に腕が回され意図も容易く抱き上げられる
「あ、あの…一体…」
「…僕達は盗賊です…
この街のお宝を盗みに来たんですよ」
柔らかな物腰で話す彼に理解が追いつかない
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