□蝶の休憩所
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暫く話し込んでいると店員が近付き、ラクスに指名が入ったと告げる

「ラクスさん、指名が入りました…」

「はい、わかりました
申し訳ございません、キラ様…私、行かなくてはいけませんので…
すぐに別の子が来ますから、ゆっくり、楽しんで行ってくださいね」

ニッコリと微笑んで立ち上がるラクスの腕を反射的に掴んでしまう

「ら、ラクスさん!
ラクスさんは…明日も店に居ますか!?」

「え?えぇ、基本的に営業日は毎日居ますわ」

「明日も来ます!明日も君を指名するから!」

「まぁ…ありがとうございますわ、楽しみにしてますわね」

ニッコリと、営業スマイルで頷き指名をした客の元へと去っていく

そして、次に来た子にラクスについての情報を貰い
チラリとラクスの方を見ればまだまだ僕の元には来ない様子に諦めて未だにマリューさんを口説くムウさんを置いて帰る

それから毎日、ラクスの元に通い毎日ラクスを指名した

フリーのプログラマーで普段なら依頼の2割を引き受ければ良い方、な仕事状況だったが
来るもの拒まずで全て引き受けた

ムウさんや別の契約先のバルトフェルドさんなんかは僕の仕事量が増え小躍りしそうな勢いだったが
僕はラクスの相変わらずな態度に若干落ち込んでいた

他のお客さんがプレゼントを渡してるのを見て、ラクスに似合いそうなのを見繕って持って行ったら
物を見て『こ、こんな高級ブランドのトータルコーディネートなんて貰えません!!』と返された

お金の使い方が正直良く解ってないせいで、プレゼントはことごとく高級過ぎる!と返され仕方なく諦めた

それならば!と欲しい物を買うからデートして!と言えばニッコリと『私、アフターは受け付けてませんの』と言われて撃沈

それでもめげずに通い詰めたら、少しずつ、ぽつりぽつりと自分の事を話してくれるようになった

年は同じで、この仕事を始めたきっかけも親と喧嘩して家を飛び出し生活費を稼ぐのに時給だけで飛び付き
気付いたら店のナンバーワンになっていて他の仕事に再就職も難しいから、とそのまま続けている事
今では親と和解して休日にはたまに実家に帰っている事などを教えてくれた

ふとした時に見せる、営業スマイルとは違う柔らかな笑みにまた胸が高鳴る

お店用のとはいえアドレスも教えてもらい、会えない時間もメールのやり取りをした


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