□愛情
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「ラクスさん、ですよね?
うん、半年ぐらい前に急に住み込みで〜って言われて今一緒のアパートに住んでますよ
今日は仕事休みですけど、ここで働いてますし」

「本当に!?」

「はい、妊娠して今までの職場じゃ無理だから引っ越したって…」

ラクスが妊娠している

それは、多分、僕の子だろう

前の妻だった女性に言われた時は何とも思わなかったのに、今回は嬉しくて涙が滲んだ

「えっと…今から、ラクスさんの部屋に配達行くんで…案内、します?」

「…うん、お願いしてもいいかな?」

「はい」

頷いて店先に置いてあった野菜の入った袋を持ち先導してくれる


そこは、海に面した小さなアパートだった

「ラクスさーん!配達来ました〜」

「はーい!…ルナちゃん、いつもありがとうございますわ」

「いえいえ、気にしないでください!重いのは危ないですからね
あ、今日はラクスさんにお客さんがいるんですよ」

「お客さん?私に、ですか?」

「や、やぁ…ラクス…」

「ッ!き、キラ…」

「じゃあ、私まだ仕事あるんで」

「あ、ルナちゃっ……はぁ…中に、入ってください…」

去っていってしまったルナマリアを見送り、小さく溜め息を吐くとキラを中へと促す

ラクスの部屋はこじんまりとしたワンルームで開け放たれたカーテンの奥には水平線が見えた

「…私が…玩具が急にいなくなったからですか…?
てっきり、新しい玩具でも見付けてると思いましたわ」

ルナマリアが配達した野菜を終うとお茶をグラスに注ぎ出される

「君を、ラクスを玩具だって思ってなんかいない…
ラクスが好きだから、探してた」

「嘘つかないでくださいな?
あなた、結婚してるんでしょう?」

「ちゃんと離婚してきた!そもそも、望んで結婚した訳じゃないんだ」

前の結婚の経緯をちゃんと説明すると微かに驚いた表情を浮かべるも納得できないと顔を反らす

「本当に、結婚したくなかったら、そもそも許可をしなければ良かったのに…」

「うん…それは僕も反省してる…
そうすれば、最初からちゃんとラクスに優しく出来たから…」

「っ…わ、私は、あなたが優しくしたからって惚れるとは限りません」

髪を一房掴んで呟けば微かに狼狽えるラクス

「うん、解ってる…今も、嫌われてるって事も…
だから、最後のチャンス…僕がどれだけラクスを愛してるか伝えるから…側に居させて…?」

「〜〜っ…せ、籍を入れたりは、私がちゃんと納得してからですからね…?
それに、子育ては空気の良いこの町でしますから、あなたが引っ越すか通ってくださいね」

「ッ!うん、うん!それでいいよ!
ラクス、愛してる!」

ガバッと勢いよく抱きしめると最初は驚いていたがそっと遠慮がちに腕が回される


それから、仲睦まじい夫婦が見られるのは数ヶ月後の話…


end
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