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□言葉で言えないほど君が好き
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「さぁ、遠慮なく食べてくれたまえ!」

「はい、ありがとうございます…」

笑顔で進めるシーゲルに軽く会釈をしながらキラは考える
どうしてこうなった、と…




事の始まりは、何時ものように仕事が終わりラクスと行き付けの喫茶店でケーキを食べていた時だ

季節ももう冬で、外との温度差に窓に微かに付いた水滴
その奥の寒い真冬の風が吹く街は眩い光に包まれている
そして、近所の店の看板を片手に呼び込みを行う赤い服の青年
毎年の光景ながら微かに心が踊るのは正面でケーキを頬張る彼女のせいだろうと思う

キラ・ヤマトはフリーダムと言う名で声優と言う仕事をしているがプライベートを守るために顔出しはしていない
つまり、仲間たちがクリスマスイベントに参加する為に恋人や家族に頭を下げたりするなかでクリスマス当日に恋人と過ごせるのだ

(よし、ラクスの予定が入る前にクリスマスイブか当日…どっちかだけでも開けてもらおう)

父子家庭で父親と仲の良いラクスは家族との時間も大切にするし
もしかしたら友達と約束しているかもしれないし、と思いラクスの名前を呼ぶ

「ラクス」

「はい、なんですか?キラ様」

口のはしにクリームを付けたままこてん、と首を傾げるラクスに微笑んで指先で拭ってやりながら声を掛ける

「クリスマス、予定空いてるかな?」

「んむ…クリスマス、ですか?」

頬を赤らめ照れながらも目を瞬かせるラクスに優しく微笑んで頷く

「えっと…あ、ガンダム特番の日なので、朝からDVDをじっくり鑑賞して特番に挑む予定ですわ」

「…え?特番…?」

「はい、フリーダム様主役のシリーズが新規カット含む総集編とクリスマススペシャルストーリーの放送がありますの!
なので、特番が始まるまでDVDで予習をして、特番をリアルタイムで見たあとはもう一度録画を見ますの!
なので、クリスマスはフリーダム様に捧げてますわ」

きゃっ、と頬を赤らめ照れながら宣言するラクスに固まり、店中から憐れみの視線を頂戴したのは数週間前の事

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