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□涙の味
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「は、離して…キラ…」

「僕が嫌いなら殴ってでも逃げなよ」

「っ…出来るわけ、ないじゃないですか…」

泣きそうな声にドキリとして足を止める
だけど、あの頃のように優しく微笑む事も、願い通りに解放する事も出来なかった

「…ごめん、あの頃の僕は君によく見られる為に大人ぶってたけどさ…
今の僕は君を離したくない…この手を離したくないって思ってる…
だから、本当に嫌なら君が逃げてくれなくちゃ、僕からは離せないよ…」

「キラ…」

そっと、躊躇いがちに手が握り返されて目を見開き見つめれば
ポロポロと涙を溢すラクス

「ら、ラクス…」

「私…わた、くしに、優しいキラが…嫌いだった…」

涙を拭おうと伸ばした手はラクスの言葉に停止してしまい小さく息を飲む

「私は守られてばかり、で…
キラは何時も、傷付いて…だけど、私に頼ってくれなく、て…
好きで、大好きで…一緒に居たかった…
でも、私の為にキラがどんどん、自分を犠牲にするのを見るのが辛くて…
キラの心が遠くに感じて、苦しかった…」

「違う…犠牲なんて…傷付いたりなんて…
君が笑ってくれれば、平気だったんだ!
ラクスが笑い掛けてくれるだけで…僕は幸せだったんだよ…」

「でも…最後の時…キラは泣きながら、笑ったじゃないですか…!
私の為にって…本当は嫌だって言って欲しかった…
キラに、わがまま言われたかった…」

ポロポロと涙を溢すラクスに絶句して、泣きたくなる

僕がラクスの為にしていたことが、ラクスを傷付けて終わりを招いていたなんて…

「…ラクス…
離したくない…離れたくない…帰ってきてよ、僕の所に…」

「キラ…帰りたい…キラの隣に…また、一緒に居たい…」

抱き寄せ、懇願すればラクスも背中に腕を回してくれて、しがみついてくる

ラクスの顔を上に向けて、そっと唇を重ねる
あの日と同じ涙の味のキスなのに、何故か暖かく感じた

「…ラクス、君が好きだ…もう、逃げないで…」

「私も、あなたが好き…もう、一人で傷付かないで…?
一緒に背負って行きましょう?」

そしたら、悲しみは半分、喜びは何倍にもなると泣きながら笑うラクスが愛しくてもう二度と離さないとあの日に誓った…


end
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